洗顔後の肌がすぐにつっぱる、以前は気にならなかったシミがはっきり見えるようになった、ファンデーションが乾いた部分に粉浮きする――六十代になると、こうした肌の変化を実感する女性は多い。肌の変化は自然な加齢現象だが、仕組みを知って日々の手入れを少し変えるだけで、乾燥やシミの進み方は変わってくる。男性の身だしなみについては白髪・薄毛との向き合い方で扱ったが、ここでは女性のシニア世代に向けて、乾燥とシミという二大テーマを軸にスキンケアの基礎を整理する。
加齢に伴う肌の乾燥・バリア機能低下のメカニズム
肌の表面には、水分の蒸発を防ぎ外部の刺激から内部を守る「バリア機能」がある。このバリア機能を支えているのが、角層に存在するセラミドをはじめとする細胞間脂質と、皮脂膜だ。加齢とともに皮脂の分泌量は男女とも減少するが、特に女性は更年期を境にエストロゲンの分泌が急激に落ちることで、皮脂量とセラミドの生成量がまとめて減少しやすい。この結果、肌が水分を溜め込む力そのものが弱くなり、以前と同じ洗顔・保湿をしていても乾燥を感じやすくなる。更年期以降の体調変化全般については更年期以降の体調変化との付き合い方で扱っているので、肌以外の変化もあわせて把握しておくと対策を立てやすい。
保湿の基本
セラミド配合化粧品を選ぶ
乾燥対策の核になるのは、不足したセラミドを外から補うことだ。化粧水だけで済ませず、セラミドやヒアルロン酸を配合した美容液・クリームを重ねづけし、水分を抱え込む土台を油分でふたをする「保湿の順番」を意識する。洗顔後3分以内に化粧水をつけると、肌が乾燥する前に水分を補給できる。手のひら全体で顔を包むように押さえながらなじませると、こすらずに浸透させやすい。
洗顔・入浴時に皮脂を守る工夫
洗浄力の強い洗顔料や、熱いお湯での洗顔は、ただでさえ減っている皮脂膜を余計に洗い流してしまう。ぬるま湯(35〜38度程度)で洗い、洗顔料はよく泡立ててから顔にのせ、こすらず短時間で洗い流すと肌への負担を抑えられる。入浴も長湯や熱い湯は肌の乾燥を進めるため、湯船は40度以下・15分程度を目安にし、上がった直後の肌が潤っているうちに全身の保湿剤を塗ると乾燥を防ぎやすい。冷えによって血行が悪くなると肌のターンオーバーも乱れやすいため、冷え性・血行不良対策を併せて行うと肌の状態にも良い影響が出やすい。
睡眠の質が肌の回復力に影響する
肌のターンオーバーは主に就寝中に進むため、睡眠の質が乱れると乾燥やくすみが改善しにくくなる。特に眠り始めの3時間は成長ホルモンの分泌が集中する時間帯で、この時間に深く眠れているかどうかが翌朝の肌の調子を左右しやすい。就寝前のスマートフォン操作を控える、寝室の照明を落とすといった工夫で入眠の質を高められる。定年後は生活リズムが崩れやすく、夜更かしや朝寝坊が続くと睡眠の質そのものが下がってしまうため、退職後の睡眠リズムの整え方を参考に生活全体のリズムを整えることが、遠回りに見えて肌の調子を安定させる近道になる。
紫外線対策
日焼け止めはSPF・PA値より「塗る量と塗り直し」が重要
日焼け止めはSPF50・PA++++のような高い数値のものを選んでも、塗る量が少なければ効果は発揮されない。顔全体でパール2〜3粒分を目安に、外出前にムラなく塗り、屋外での作業や外出が続く日は3〜4時間おきに塗り直すことで、数値以上に紫外線対策の実効性が上がる。日常的な買い物程度であればSPF20〜30・PA++程度でも十分だが、庭仕事やウォーキングなど屋外にいる時間が長い日はSPF50・PA++++のものに切り替えるといった使い分けが現実的だ。
日傘・帽子・アームカバーなど物理的な対策
日焼け止めだけに頼らず、つばの広い帽子やUVカット加工の日傘、アームカバーを併用すると、塗り漏れによる焼けムラを防げる。特に顔の中でも頬骨の高い部分や額はシミができやすいため、帽子で影をつくるだけでも紫外線量を大きく減らせる。
シミ・くすみへの向き合い方
六十代に目立ってくるシミの多くは、長年の紫外線の蓄積によってできる「老人性色素斑」と呼ばれるタイプで、輪郭がはっきりした茶色いシミとして頬や額、手の甲に現れやすい。美白効果をうたう化粧品は、新たなシミの原因となるメラニンの生成を抑える働きが中心で、すでに定着した濃いシミを薄くする力には限界がある。すでにあるシミをはっきり薄くしたい場合は、皮膚科や美容皮膚科でのレーザー治療という選択肢もあり、シミの種類や肌質によって適した治療法が異なるため、医師の診察を受けたうえで方針を決めることになる。くすみについては、乾燥によるターンオーバーの乱れが原因になっていることも多く、保湿を整えるだけで肌の透明感が戻るケースもある。目元は皮膚が薄くシミよりも小じわやたるみが出やすい部分で、老眼鏡の着脱を繰り返す動作や、目を細めて画面を見る癖が原因でしわが刻まれやすい。老眼・白内障など目の変化で紹介しているように、合わない老眼鏡を使い続けて目を細める癖がつくと、目元のしわを増やす一因にもなるため、視力の変化に合わせて眼鏡を調整することも間接的な目元ケアにつながる。
皮膚科受診の目安
市販の保湿剤や日焼け止めを使っても乾燥によるかゆみや赤みが続く場合、シミの輪郭がいびつだったり短期間で急に大きくなったりする場合は、皮膚科で診察を受ける目安になる。特に後者は、まれに皮膚がんなど別の病気が隠れていることもあるため、「年齢のせいだろう」と自己判断で済ませず、形や色に違和感のあるシミ・ほくろは早めに皮膚科で確認してもらうと安心につながる。ある元事務職の六十代女性は、頬にできた茶色いシミが数か月で急に濃くなったことに気づき、市販の美白クリームを試していたが変化がなかったため、思い切って皮膚科を受診したところ、老人性色素斑と診断されレーザー治療で数回のうちに薄くすることができた。「もっと早く相談すればよかった」と話しており、迷った段階で皮膚科の診察を受ける行動が結果的に手間を減らした例と言える。市販薬や化粧品を数か月試しても変化が乏しいまま様子を見続けるより、早い段階で皮膚科の診察を選択肢に入れておくほうが、結果的に治療の幅も広く残りやすい。
よくある質問
Q. 化粧水だけでは保湿が足りないと感じます。何を足せばいいですか。
A. 化粧水の後にセラミドやヒアルロン酸配合の美容液を重ね、最後にクリームで油分のふたをすると保湿効果が持続しやすい。特に頬や目元など乾燥しやすい部分は、重ねづけで水分を逃がさない工夫が必要になる。
Q. 日焼け止めは冬でも塗ったほうがいいですか。
A. 紫外線は夏だけでなく一年を通して降り注いでおり、冬でも晴れた日は夏の半分程度の紫外線量がある。シミの予防という観点では、季節を問わずSPF20〜30程度の日焼け止めを日常的に使う習慣が効果的だ。
Q. シミなのか、ほくろなのか、皮膚科でしか見分けがつかないのでしょうか。
A. 輪郭がはっきりした茶色い平らなシミであれば老人性色素斑であることが多いが、盛り上がりがある、左右非対称、急に大きくなったといった特徴がある場合は自己判断が難しい。気になる変化があれば皮膚科で診てもらうと、必要に応じて適切な治療の選択肢を提示してもらえる。
実際に乾燥・シミ対策に取り組んだ体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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