介護離職後、介護の時間を確保しながらも収入を完全に断つことには不安があり、在宅ワークや副業で生計を立てる方法を探す人が増えています。介護はいつ終わるかの見通しが立ちにくいため、フルタイムの再就職よりも、介護の状況に合わせて稼働時間を調整できる働き方を選ぶ人も少なくありません。この記事では、介護離職後に在宅ワーク・副業で生計を立てる際に検討しておきたい方法と注意点を整理します。
介護と両立しやすい働き方の種類
在宅ワークには、クラウドソーシングを使ったライティングやデータ入力、オンライン事務代行、プログラミングやデザインなどのスキルを活かした業務委託、自分の経験を活かしたオンライン講師業など、さまざまな形があります。介護の合間にまとまった時間を確保できるかどうかは日によって変わるため、締め切りが固定されている業務よりも、作業量を自分で調整しやすい業務から始める人が多いです。はじめから高い収入を目指すのではなく、まずは生活費の一部を補う規模から始めるという考え方が、無理なく続けるための現実的な目安になります。
業務委託か雇用かで変わる社会保険の扱い
在宅ワークを業務委託(個人事業主)として始める場合、社会保険は国民健康保険と国民年金に加入することになります。一方、短時間のパート・アルバイトとして雇用される形で在宅勤務を行う場合は、勤務先の社会保険に加入できる可能性もあります。どちらを選ぶかによって保険料の負担や将来の年金額が変わってくるため、収入の見込みに応じて選択することが重要です。年収が一定額を超えると家族の被扶養者から外れる場合もあるため、扶養の範囲内で働くかどうかも事前に確認しておく必要があります。
開業届と確定申告の準備
個人事業主として在宅ワークを始める場合、税務署に開業届を提出することで、青色申告を選択できるようになります。青色申告には、最大65万円の青色申告特別控除などのメリットがありますが、事前の申請期限や帳簿付けの要件があるため、早めに準備しておくことが望ましいです。確定申告は、介護離職をした年の所得状況によって必要・不要が変わるため、国民健康保険料や国民年金の免除申請を検討する際にも、所得の見通しを立てておくことが欠かせません。
青色申告の特別控除を受けるには、開業届と青色申告承認申請書の提出期限 を守る必要があります。期限は原則、開業日から2か月以内です。税務署や税理士に早めに確認してください。
対照的な2つの始め方
ある元人事職の40代女性は、父親の介護離職後、クラウドソーシングで人事・労務関連のライティング業務を受注することから始めました。最初の3か月は生活費の一部にしかならない収入でしたが、介護の合間に作業できる業務量を見極めながら徐々に受注を増やし、半年後には介護前の収入の7割程度まで回復させています。本人は「無理に正社員を目指さず、介護の状況に合わせられる働き方を選んだことが続けられた理由」と話しています。
一方で、ある元営業職の50代男性は、介護離職後すぐに高単価の業務委託契約を複数件受けてしまい、介護の負担が増えた時期に業務が重なって対応しきれなくなりました。クライアントとの契約トラブルにもつながり、信頼関係を損なう結果になったといいます。後から振り返り、最初は受注量を抑えて介護との両立を優先すべきだったと話しています。
仕事を受注する際の時間配分の工夫
在宅ワークを介護と両立させる上で難しいのは、介護の予定が急に変わることが多いという点です。訪問介護やデイサービスの利用日であっても、本人の体調不良などで予定が変更になることがあり、あらかじめ決めていた作業時間が確保できなくなる場合があります。そのため、締め切りまでに一定の余裕を持たせた業務を優先的に受注し、急な予定変更があっても対応できる体制を作っておくことが現実的な工夫になります。複数の発注元から少しずつ業務を受けることで、一つの契約に依存しすぎないようにしている人も多く、介護の負担が増えた時期には受注量を一時的に減らすといった調整を行っています。
慣れないうちは、クラウドソーシングサイトの実績やレビューを積み重ねることを目標にし、単価よりも継続して依頼を受けられる関係づくりを優先する人もいます。介護の状況が落ち着いてきた段階で、単価の高い業務委託契約に切り替えていくなど、段階的に収入を増やしていく進め方が、無理のない形で生計を立て直す方法として選ばれています。
生計を安定させるための備え
在宅ワーク・副業で生計を立てる場合、会社員のような毎月の固定給がないため、収入の波に対応できる備えが必要になります。小規模企業共済や国民年金基金など、個人事業主向けの将来の備えとなる制度も検討材料になります。また、介護休業給付金のように雇用保険から受けられる給付は退職後には対象外になるため、介護保険サービスの利用料や医療費の負担を含めた生活費全体の見通しを立てておくことが欠かせません。収入が不安定な時期が続く場合は、自治体の生活困窮者自立支援相談窓口や社会福祉協議会の貸付制度についても確認しておくと安心です。
スキルを維持・習得するための工夫
在宅ワークで安定した収入を得るには、介護離職前に持っていたスキルをどう活かすかに加えて、新たなスキルを習得する時間の作り方も課題になります。オンライン学習サービスを使えば、介護の合間の短い時間でも学習を進めやすく、ライティング、簿記、プログラミング、デザインなど、在宅ワークと相性のよいスキルを少しずつ身につけている人もいます。ハローワークが実施する職業訓練の中には、在職者向けだけでなく離職者向けのコースもあり、受講料の補助を受けられる制度が用意されている場合もあります。介護の状況によって通学型の訓練が難しい場合は、オンラインで受講できる講座を優先的に探すとよいでしょう。
介護離職後に在宅ワークで生計を立てる場合、退職の扱いや税務面の準備もあわせて進めておく必要があります。退職が会社都合になるかどうかは介護離職は会社都合退職として扱われるか、介護離職による収入減の影響については介護離職による経済的な影響と事前の備えで解説しています。在宅ワークを始めた1年目の確定申告の進め方はフリーランス1年目の確定申告のやり方、再就職までの期間の過ごし方はメンタル不調での退職後に再就職までの期間の過ごし方も参考になります。
よくある質問
介護離職後、在宅ワークだけで生活できますか
介護の状況や在宅ワークの単価、稼働できる時間によって大きく異なります。最初から生活費全体を在宅ワークでまかなうのではなく、国民年金・国民健康保険の免除制度なども組み合わせて検討する人が多いです。
開業届を出さずに在宅ワークを始めてもよいですか
開業届を出さなくても業務委託の収入を得ることは可能ですが、青色申告のメリットを受けられなくなります。継続的に収入を得る予定がある場合は、早めに開業届を提出しておくことが選択肢を広げます。
在宅ワークの収入が増えたら社会保険はどうなりますか
一定の収入を超えると、家族の被扶養者の資格を外れたり、国民健康保険・国民年金の負担が変わったりする場合があります。収入の見込みが変わった際は、早めに加入先の健康保険組合や自治体の窓口に相談してください。
在宅ワークを始める準備としてフリーランスの会計ソフト選びと経理の始め方や独立時にオフィスを借りるか自宅開業にするかの比較、小規模企業共済で独立後の備えをつくる方法を参考にしてください。確定申告については退職後に確定申告が必要なケースと不要なケース、短時間の雇用で働く場合は失業保険受給中にアルバイトをしても良いかも確認しておくとよいでしょう。
実際に介護離職後の在宅ワーク・副業の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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