現役時代はスーツや制服が服装選びの基準になっていたが、定年後は毎日の服を自分で選ぶことになる。着慣れたものをそのまま着続けている人も多いが、体型は年々変わっていくため、若い頃に買った服がいつの間にか体に合わなくなっていることも少なくない。髪や肌の手入れについては男性の身だしなみや女性のシニアスキンケアで扱ったが、服装もまた清潔感を左右する大きな要素だ。ここではサイズ感、色使い、シーン別の選び方という3つの視点から、六十代からの服装選びを整理する。
体型変化に合わせたサイズ感の選び方
実寸を測り直す
若い頃に比べて、お腹まわりが出てきた、逆に痩せて肩幅に対して服がだぶつくようになったなど、体型の変化は人によってさまざまだ。感覚だけで「Mサイズでいつも大丈夫」と思い込まず、年に一度はウエストと胸囲、肩幅をメジャーで実際に測ってみると、思っていたサイズと実寸がずれていることに気づきやすい。ネット通販で服を買う機会が増えている場合は特に、試着せずにサイズを決めてしまいがちなので、手元の実寸をメモしておくと失敗が減る。同じMサイズでもメーカーによって寸法は異なるため、購入前に商品ページのサイズ表と自分の実寸を照らし合わせる一手間が、返品や着ないままの服を減らすことにつながる。
既製品で合わない場合の裾上げ・お直し
体型に完全に合う既製品が見つからない場合、裾上げやウエスト詰めといったお直しを利用する手もある。特にズボンの裾が長すぎて地面を引きずっている、上着の袖が余って手が半分隠れているといった状態は、サイズが合っていないことが一目でわかってしまい、だらしない印象につながりやすい。購入店やクリーニング店で数百円から数千円程度でお直しを受けられることが多く、体に合わせて一度直しておけば長く着られる。
顔色を明るく見せる色使い
顔まわりに明るい色を持ってくる
年齢を重ねると肌のトーンがくすみやすくなるため、顔に近いシャツやジャケットの襟元に暗い色ばかりを合わせると、顔色まで沈んで見えてしまう。白やアイボリー、淡いブルーやピンクなど明るめの色を襟元や胸元に置くと、顔色が明るく映り若々しい印象になる。全身を暗い色でまとめたい場合でも、インナーやストールなど顔に近い一箇所に明るい色を差し込むだけで印象が変わる。
避けたい色・素材の組み合わせ
灰色や紺、黒といった落ち着いた色ばかりを重ねると、全体が沈んだ印象になりやすい。上下とも同じ濃さの暗い色にするのではなく、上は明るめ、下は落ち着いた色というように明暗のコントラストをつけると、まとまりがありながらも重たく見えない着こなしになる。光沢の強すぎる素材や、体のラインを拾いすぎるぴったりとした素材も、意図せず着崩れた印象を与えやすいため注意しておきたい。
シーン別の服装選び
普段着
近所への買い物や散歩程度であっても、部屋着のまま外に出る習慣がついてしまうと、いざ外出着に着替える機会そのものが減っていく。ジャージやスウェットでも、シワのない清潔なものを選び、靴も踵をつぶさず履くようにすると、普段着でも人前に出られる状態を保ちやすい。玄関に外出用の上着と靴をひとそろい置いておき、「近所に出るときはこれ」と決めておくだけでも、部屋着のまま出てしまう習慣を防ぎやすくなる。
冠婚葬祭
結婚式や葬儀といった冠婚葬祭の服装は、久しぶりに袖を通すと体型変化でサイズが合わなくなっていることに気づくことが多い。喪服やフォーマルスーツは年に数回しか着ないからこそ、いざという時に慌てないよう、年に一度は試着して現在の体型に合うか確認しておくと安心につながる。
再雇用面談・面接での服装
再雇用制度を利用して働き続ける場合や、定年後の再就職面接に臨む場合は、現役時代よりも服を着る頻度が減っている分、ジャケットやスーツにシワや型崩れが出ていないか事前に確認しておく必要がある。何年も着ていないスーツはクリーニングに出しても生地の劣化や体型とのズレが出ていることがあるため、面談の予定が決まった時点で一度袖を通し、必要であればお直しやクリーニングの時間を見込んでおくと直前で慌てずに済む。
シワ・毛玉などメンテナンスの重要性
どれだけ体型に合った服を選んでも、シワや毛玉が目立つと清潔感は一気に損なわれる。着る直前にアイロンをかける習慣がなくても、ハンガーにかけて湿気を含ませた状態で干すハンガー乾燥や、ハンディスチーマーでシワを伸ばすだけでも見た目はかなり変わる。ニット類にできた毛玉は、毛玉取り専用のブラシや電動の毛玉取り器で定期的に処理しておくと、お気に入りの服を長く清潔な状態で着続けられる。靴も服と同じくらい印象に影響する部分で、かかとのすり減りや汚れをそのままにしていると、服がきちんとしていても全体の印象が下がってしまう。月に一度、靴を磨く、汚れを拭き取るといった手入れの時間をつくっておくと、いつでも人前に出られる状態を保ちやすい。壮行会・送別会のような場に呼ばれる機会がある人は、こうした手入れの済んだ一着を普段から準備しておくと、急な誘いにも慌てず対応できる。
清潔感のある服装が信頼感につながった例
ある元公務員の六十代女性は、退職後は自宅で過ごす日が増え、外出時も何年も前に買ったブラウスやスカートをそのまま着ていた。ある日、地域のボランティア活動の説明会に参加した際、久しぶりに着たジャケットの肩まわりがすっかりゆるくなっていることに気づき、周囲の参加者と比べて自分だけ着こなしがだらしなく見えている気がしたという。それをきっかけに、手持ちの服を一度すべて試着して体に合うものだけを残し、合わないものは思い切って処分。新しく買い足したのは襟元が明るい色のブラウス数枚だけだったが、以降の集まりでは「雰囲気が変わった」「元気そう」と声をかけられることが増えたと話している。高価な服を新調しなくても、サイズと色使いを整えるだけで印象は変えられるという例だ。この女性はその後、季節の変わり目に手持ちの服を一度全部着てみる「衣替えチェック」を習慣にしており、サイズが合わなくなった服にその都度気づけるようになったという。
よくある質問
Q. 体型が変わりやすい時期に、服を買い替えるタイミングの目安はありますか。
A. ウエストや裾丈が以前と明らかに違って感じる、お直しで対応しきれないほどサイズが合わなくなったと感じた時期が買い替えの目安になる。年に一度、衣替えのタイミングで手持ちの服を試着し、実際に着られるかどうかを確認する習慣をつけておくと判断しやすい。
Q. 何を着ればいいかわからず、結局いつも同じ服になってしまいます。
A. 顔まわりに置く明るい色のアイテムを2〜3枚用意し、手持ちの落ち着いた色の服と組み合わせる形にすると、選ぶ手間をかけずにパターンを増やせる。同じシルエットでも色を替えるだけで印象が変わるため、まずは襟元の一枚から試すとハードルが低い。
Q. 冠婚葬祭用の服はどのくらいの頻度で確認すればいいですか。
A. 年に一度、衣替えの季節に試着しておくと、いざという時にサイズが合わない事態を防げる。特に喪服は急な訃報で着る機会が多いため、体型が変わったと感じた時点で早めに確認しておくと安心につながる。
実際に体型変化に合わせた服選びの体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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