一度大きな病気を経験した後、治療が終わって職場に戻っても、「再発したらまた同じように働けなくなるかもしれない」という不安がつきまとうことがある。再発リスクを抱えながら働き続けるか、一度退職して治療や生活の立て直しに専念するかは、病状や勤務先の制度によって最適な答えが変わる難しい判断である。この記事では、再発リスクがある中での退職判断をどう考えるか、制度面の確認事項と二人の体験談を交えて整理する。
再発リスクを抱えながら働く際に確認したいこと
主治医・産業医の意見を踏まえる
再発リスクのある病気(がんや心疾患、精神疾患など)を抱えながら働き続けるかどうかは、まず主治医にどの程度のリスクがあり、どのような働き方が望ましいかを確認することが出発点になる。企業に産業医が配置されている場合は、主治医の意見書をもとに、勤務時間の調整や業務内容の変更について産業医面談を通じて相談できる。退職を決める前に、医学的な見立てと職場の調整余地を確認しておくことには意味がある。
休職制度と傷病手当金の期間を把握する
再発した場合に備えて、勤務先の休職制度がどの程度の期間利用できるか、事前に確認しておくことが重要になる。休職期間は勤続年数や企業の規定によって数か月から数年まで幅があり、期間が尽きると自動的に退職扱いになる企業もある。休職中は健康保険の傷病手当金(最長1年6か月、給与の約3分の2相当額)が支給される場合があり、再発時の生活費をどの制度でまかなえるかを把握しておくと、いざという時に落ち着いて対応しやすくなる。病気で退職する場合の傷病手当金の申請方法については病気で退職した場合の傷病手当金の申請方法でも詳しく解説している。
退職を選ぶ場合に検討したい制度
障害年金の対象になる可能性
再発を繰り返す病気や、治療の影響で長期的に就労が困難な状態が続く場合は、障害年金の対象になる可能性がある。障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金があり、加入している年金制度や障害の程度によって受給額や対象範囲が異なる。初診日の時点でどの年金制度に加入していたかが審査のポイントになるため、年金事務所での確認が欠かせない。
失業保険における特定理由離職者の扱い
病気の再発リスクを理由に自己都合で退職する場合でも、医師の診断書などにより「正当な理由のある自己都合退職」として特定理由離職者に認定されれば、給付制限期間が短縮される場合がある。ハローワークの窓口で退職理由を具体的に説明し、必要な書類について確認しておくことで、退職後の生活費計画を立てやすくなる。退職に際して必要になる診断書の取り方についてはメンタル不調で退職する際の診断書の取り方も参考になる。
再発に備えて事前にできる準備
治療と仕事の両立支援プランの活用
厚生労働省は、がんなどの疾病を抱える従業員が治療と仕事を両立できるよう、主治医・産業医・会社の三者で情報共有しながら「両立支援プラン」を作成する仕組みを示している。勤務先がこの仕組みを取り入れている場合、再発時にどのような配慮が受けられるかを事前に確認しておくことで、実際に再発した際の対応がスムーズになる。両立支援コーディネーターを配置している医療機関や支援機関もあるため、治療中の病院に相談してみるのも一つの手段である。
家計のシミュレーションを先に用意する
再発時にすぐ休職や退職の判断ができるよう、休職中の収入(傷病手当金の金額)と、退職した場合の失業保険や障害年金の見込み額を、あらかじめ大まかに計算しておくと判断が早くなる。再発してから慌てて制度を調べるよりも、健康な時期に一通りの制度を確認しておく方が、落ち着いて対応しやすい。
体験談:再発への向き合い方が分かれた二人
再発を機に退職した40代男性のケース
ある元建設業の40代男性は、一度大腸がんの治療を終えて復職したが、2年後に再発が見つかり、再び長期の治療が必要になった。1回目の休職で休職期間の上限に近づいていたこともあり、再発を機に退職を決断したという。退職後は傷病手当金の継続受給と障害年金の申請を進め、治療に専念できる環境を整えた。本人は「再発した時点で、使える制度を一通り確認できたことが助けになった」と話している。
制度を調整しながら継続した30代女性のケース
一方、ある元看護師の30代女性は、甲状腺の病気の治療後、再発の可能性があると言われていたが、産業医と相談しながら勤務時間を短縮し、負担の少ない部署への異動を実現した。再発した際にすぐ休職できるよう、事前に人事担当者と休職制度の利用条件を確認しておいたため、実際に再発した際も落ち着いて休職手続きを進められたという。本人は「働き続けることを前提に、先に制度を確認しておいたことが安心材料になった」と振り返っている。
休職期間には企業ごとの上限があり、再発時にすぐ使える休職期間が残っているかどうかで、退職の判断が大きく変わることがある。
職場復帰後の働き方を調整する方法
再発リスクを抱えたまま働き続ける場合、復帰直後からフルタイムで元の業務量に戻すのではなく、段階的に業務量を増やしていく「リハビリ出勤」や試し出勤の制度を設けている企業もある。産業医がいる場合は、復帰後の業務内容や勤務時間について、定期的な面談を通じて見直す機会を設けてもらえるよう相談しておくと、無理な働き方を続けてしまうリスクを減らせる。
退職するかどうかを決める前にできること
再発リスクを抱えながらの退職判断は、病状の見通しと勤務先の制度の両方を確認した上で行うことが望ましい。主治医の意見書、産業医面談、休職制度の残り期間、傷病手当金・障害年金・失業保険の各制度について、それぞれの窓口(勤務先の人事、年金事務所、ハローワーク)で情報を集めておくことで、再発した場合にも落ち着いて次の行動を選びやすくなる。
家族や周囲との情報共有
再発リスクを抱えている場合、どのタイミングで誰に病状を伝えるかも整理しておきたい点である。家族には、再発した場合に想定される治療期間や生活への影響をあらかじめ共有しておくことで、実際に再発した際の役割分担(通院の付き添いや家事の調整など)を決めやすくなる。職場については、全てを開示する必要はないが、業務に影響する可能性がある範囲については、産業医や人事担当者と相談しながら、どこまで伝えるかを検討しておくと、再発時の対応がスムーズになりやすい。
似たような事情で退職を考える人へ
うつ病などメンタル面の不調から休職・退職・復職の道筋を検討している場合はうつ病による休職から退職・復職への道筋も参考になる。退職に必要な書類の準備については適応障害による退職で必要になる書類でも整理している。
よくある質問
再発した場合、休職と退職どちらを選ぶべきですか
休職期間がどの程度残っているか、治療にかかる見込み期間、勤務先の制度によって最適な選択は異なる。休職期間の上限が近い場合は、退職後の傷病手当金の継続受給や障害年金の申請も含めて検討する必要がある。
障害年金はどのタイミングで申請すればよいですか
障害の程度や就労状況によって申請可能なタイミングが異なるため、年金事務所や社会保険労務士に相談し、初診日や障害の状態を確認したうえで判断する必要がある。
病気の再発を理由に退職すると失業保険の扱いは変わりますか
医師の診断書などにより特定理由離職者として認定されれば、給付制限期間が短縮される場合がある。退職理由を具体的に説明できる書類を準備し、ハローワークの窓口で確認することが望ましい。
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実際に病気の再発リスクを抱えながらの退職判断の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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