介護施設への入所を希望していても、順番待ちで何年も入れない、希望する施設に空きがない、といった事情で在宅介護を続けざるを得なくなる家庭は少なくない。特別養護老人ホームなどの一部施設は待機者が多く、地域によっては申込みから入所まで長期間かかることもある。施設に入れない状態が続き、結果的に仕事を辞める決断をする人もいる。この記事では、施設に入れずに退職を選んだ場合に取るべき対応と、実際に異なる選択をした二人の体験談を紹介する。
施設に入れない場合、まず確認したい選択肢
在宅サービスを組み合わせて負担を分散する
施設入所が決まらない間も、訪問介護、訪問看護、デイサービス、短期入所(ショートステイ)などを組み合わせることで、在宅介護の負担を一定程度分散できる。特にショートステイは数日から数週間単位で利用できるため、介護者がまとまった休息を取ったり、仕事の繁忙期を乗り切ったりする際に活用されることが多い。利用できるサービスの組み合わせはケアマネジャーが要介護度や予算に応じて調整してくれるため、早い段階で相談しておくことが欠かせない。
複数の施設に同時に申し込む
特別養護老人ホームなどは、複数の施設に同時に申し込むことが一般的に認められている。待機順位は申込み順だけでなく、介護度や家庭の状況(介護者の就労状況や健康状態など)も考慮されるため、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、自分の家庭の優先度がどの程度か確認しておくとよい。有料老人ホームなど民間施設も選択肢に入れることで、入所までの期間を短縮できる可能性がある。
退職せずに両立を続けるための制度
介護休業・介護休暇の活用
施設入所までの見通しが立たない状況では、介護休業(対象家族1人につき通算93日、3回まで分割取得可能)や介護休暇(年5日、対象家族2人以上は年10日)を使い、在宅介護の体制を整える時間を確保する方法がある。休業中は雇用保険から介護休業給付金が支給される場合があるため、休業前賃金の一定割合を受け取りながら対応できる可能性がある。
勤務先への相談と時短勤務制度
介護休業・介護休暇に加えて、育児・介護休業法では、要介護状態の家族を介護する従業員に対し、短時間勤務やフレックスタイム、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げなど、いずれかの制度を利用できるようにすることが企業に義務付けられている。施設入所までの期間、こうした制度を利用して勤務時間を調整できないか、人事担当者に確認する価値がある。介護休業制度をどのように組み合わせて退職を回避するかについては介護休業制度を使って退職を回避する方法でも詳しく紹介している。
施設探しを進める際の実務的なポイント
複数の種類の施設を比較する
特別養護老人ホームのほかにも、介護老人保健施設(老健)、グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など、入所できる施設には複数の種類がある。それぞれ費用や入所条件、提供されるサービスの内容が異なるため、ケアマネジャーに相談しながら、本人の介護度や予算に合った施設を複数の種類から検討しておくと、入所までの期間を短縮できる可能性が高まる。
見学や体験入所を活用する
入所待ちの期間を利用して、候補となる施設の見学や短期の体験入所を行っておくと、実際に入所が決まった際の判断がスムーズになる。施設によって雰囲気や職員の対応、医療的なケアの体制が異なるため、複数の施設を見ておくことで、本人や家族にとって無理のない選択をしやすくなる。
体験談:施設に入れず異なる道を選んだ二人
退職を決めた50代女性のケース
ある元医療事務の50代女性は、母親の特別養護老人ホームへの入所を申し込んでいたが、2年以上待機状態が続いた。ショートステイを併用しながら勤務を続けていたが、母親の状態が悪化し、夜間の対応が増えたことから退職を決断した。退職後は在宅介護に専念し、半年後に民間の有料老人ホームへの入所が決まったという。本人は「施設が決まるまでの見通しが立たず、仕事を続ける自信を失ってしまった」と話している。
制度を活用して継続した40代男性のケース
一方、ある元公務員の40代男性は、父親の特別養護老人ホーム入所を待つ間、介護休業を分割して取得し、ショートステイと訪問介護を組み合わせることで在宅介護の体制を維持した。勤務先の時短勤務制度も併用し、約1年半の待機期間を乗り切った後、施設入所が決まり元の勤務形態に戻ったという。本人は「制度を一つずつ確認していくことで、退職せずに済む方法が見えてきた」と振り返っている。
特別養護老人ホームの入所待機期間は地域や施設によって大きく異なり、複数施設への同時申込みが入所までの期間を左右することがある。
勤務先に状況を伝える際の進め方
施設への入所が決まらない状況が続く場合、勤務先には早めに状況を共有しておくことが望ましい。入所の見込みが立たないまま時短勤務や休業を申請すると、会社側も対応に時間がかかりやすいため、ケアマネジャーから聞いた今後の見通し(待機人数や入所の目安期間など)を共有しながら相談すると、必要な制度を具体的に検討してもらいやすくなる。人事担当者だけでなく、直属の上司にも状況を伝えておくことで、日々の業務調整がしやすくなる場合もある。
退職を選ぶ場合に押さえておきたい点
介護離職のタイミングをどう判断すればよいか迷う場合は介護離職のタイミングをどう判断するかも参考になる。また、介護離職は収入面への影響も大きいため、介護離職による経済的な影響と事前の備えも合わせて確認しておきたい。それでも在宅介護の負担が限界を超えている場合、退職という選択を否定する必要はない。退職する場合は、失業保険の受給条件、国民健康保険・国民年金への切り替え、住民税の支払いスケジュールを事前に確認し、介護費用と生活費の両方を見積もっておくことが現実的な備えになる。退職後に施設入所が決まった場合の再就職活動についても、ハローワークや転職エージェントに早めに相談しておくと動きやすい。再就職に向けた準備の進め方は介護離職後に再就職するための準備でも紹介している。
よくある質問
特別養護老人ホームにはどれくらいで入所できますか
地域や施設、本人の介護度によって大きく異なる。待機期間が数か月の場合もあれば、数年に及ぶ場合もあるため、地域包括支援センターやケアマネジャーに現在の待機状況を確認するとよい。
ショートステイだけで在宅介護の負担は減りますか
ショートステイは一時的に介護者の負担を軽減する手段として有効だが、利用できる日数には上限があり、恒常的な解決策にはなりにくい。訪問介護やデイサービスなど他のサービスと組み合わせて使うことで、負担の分散効果が高まる。
退職後に施設が決まったら再就職しやすくなりますか
介護の状況が落ち着いたタイミングで求職活動を始める人は多い。離職期間や退職理由の説明の仕方によって評価は変わるため、ハローワークや転職エージェントに相談しながら準備を進めるとよい。
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実際に介護施設の入所待ちによる退職の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


コメント
コメント一覧 (2件)
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