退職して独立したあと、最初の数ヶ月で多くの人が直面するのが「仕事をどう確保するか」という課題です。開業届を出し、屋号を決め、資金計画を立てても、実際に収入につながる仕事がなければ事業は続きません。この記事では、独立直後に仕事を確保するための具体的な方法と、それぞれの注意点を整理します。
独立前の人脈をそのまま活かす方法
独立直後に最も早く仕事につながりやすいのは、会社員時代の人脈です。前職の取引先や同業者から直接仕事を受けられる場合、営業活動をゼロから始めるよりも早く収入の見通しが立ちます。ただし、前職の就業規則によっては、退職後一定期間の競業(同業での事業活動)が制限される「競業避止義務」の条項が設けられている場合があるため、独立前に自分の雇用契約書や就業規則を確認しておくことが欠かせません。前職の取引先と直接契約を結ぶ際は、前職との契約上の問題がないかを事前に確認したうえで進める必要があります。
前職から業務委託の形で仕事を受ける「独立後も前職から仕事を請ける」パターンも多く見られます。この場合、前職の会社員ではなく個人事業主として契約を結ぶため、業務委託契約書の内容(業務範囲・報酬・支払いサイトなど)を独立前の段階で具体的に確認しておくと、独立後の交渉がスムーズになります。
クラウドソーシングやエージェントを使う方法
クラウドソーシングサービス
人脈だけに頼らず仕事を確保する方法として、クラウドソーシングサービスへの登録があります。実績や評価が蓄積されるまでは単価が低めになりやすい傾向がありますが、独立初期に実績とポートフォリオを積む手段として活用する人が多くいます。プロフィールや過去の実績を具体的に記載し、対応できる業務範囲を明確にしておくことが、依頼を受けやすくするための基本的な工夫です。
フリーランス向けエージェント
IT・Web系やコンサルティング系の職種では、フリーランス向けのエージェントサービスを利用して案件を紹介してもらう方法も一般的です。エージェントによって紹介される案件の単価や条件、契約形態(業務委託・準委任など)が異なるため、複数のエージェントに登録し、条件を比較してから契約先を決めるとよいでしょう。エージェントを利用する場合、紹介料として報酬の一部がエージェントに支払われる仕組みになっていることが多いため、提示された単価が手数料込みかどうかを確認しておく必要があります。
開業届・屋号を使った対外的な信頼づくり
退職して独立する際の開業届の出し方で触れたとおり、開業届の控えは、屋号付きの銀行口座の開設や、取引先からの信頼を得るための基礎資料として使われることがあります。屋号の決め方と開業届への書き方で解説したように、事業内容が伝わる屋号を決めておくと、初めて取引する相手に対しても「個人事業として体制を整えている」という印象を与えやすくなります。名刺や請求書に屋号を記載し、ポートフォリオや実績をまとめたWebサイトを用意しておくことも、仕事を確保する際の説得力につながります。
資金に余裕を持たせて仕事の選び方を変える
仕事を確保する段階で焦りすぎると、単価が低い仕事や条件の悪い仕事を受けてしまい、長期的に見て事業の方向性がずれてしまうことがあります。独立前に準備すべき資金計画の立て方で触れたとおり、独立前に手元資金の見通しを立てておくことで、独立直後に無理な条件の仕事を受けずに済む余地が生まれます。資金に一定の余裕があれば、単価や条件を交渉する、あるいは条件が合わない依頼を断るという選択も取りやすくなります。
複数の経路を並行して動かしておく
独立直後の仕事の確保は、ひとつの経路だけに依存すると、その経路がうまくいかなかった場合に収入が完全に止まってしまうリスクがあります。前職の人脈、クラウドソーシング、エージェント、知人からの紹介など、複数の経路を同時に動かしておくことで、ひとつの経路が不調でも他の経路で収入を補える状態を作れます。独立前の段階から、どの経路をどの順番で動かすかをざっくりとでも計画しておくと、退職直後から具体的な行動に移しやすくなります。
また、SNSやブログでの情報発信を独立前から始めておくと、独立後に「どんな仕事を受けられるのか」を知ってもらうための入口になります。発信を始めてすぐに依頼につながるケースは多くありませんが、継続して発信を続けることで、半年〜1年ほどのスパンで問い合わせが増えてきたという声もよく聞かれます。短期的な成果だけでなく、中長期的な仕事の確保の手段としても位置づけておくとよいでしょう。
体験談:仕事の確保方法で独立後の方向性が変わった例
ある元webディレクターの30代男性は、独立直後に資金の余裕がなく、クラウドソーシングで単価の低い案件を大量に受けざるをえない状況になりました。実績は積めたものの、低単価の仕事に時間を取られ、本来やりたかった分野の案件に手を広げるまでに1年以上かかったと振り返っています。
一方、ある元人事担当の40代女性は、退職前の半年間、前職の人脈を通じて副業的に小さな案件を受けながら実績を作り、独立後はその実績を使ってエージェント経由で条件の良い案件を紹介してもらえたといいます。退職前からの準備期間があったことで、独立直後から希望する条件に近い仕事を選べたと話しています。
よくある質問
前職の取引先から直接仕事を受けても問題ないですか
就業規則に競業避止義務の条項がある場合、同業での事業活動が一定期間制限されることがあります。契約内容は会社によって異なるため、独立前に自分の雇用契約書や就業規則を確認し、不明な点があれば前職の人事部門に確認しておくことが欠かせません。
独立直後、仕事がまったく決まらない期間が続いたらどうすればよいですか
仕事が決まらない期間が続く場合、クラウドソーシングやエージェントなど複数の経路を同時に試し、実績や評価を少しずつ積み上げていく方法が現実的です。あわせて、ハローワークが実施する再就職支援や、商工会議所の経営相談窓口など、独立後の事業相談に対応できる機関に相談することもできます。
エージェントとクラウドソーシング、どちらを優先すべきですか
優先すべき方法は、業種や専門性、実績の有無によって異なります。専門性が高く実績がある場合はエージェント経由の案件の方が単価が高くなりやすく、実績がまだ少ない場合はクラウドソーシングで小さな実績を積むところから始める方法が選ばれることが多いです。
前職の競業避止義務の有無は、独立直後に前職の取引先から仕事を受けられるかどうかを左右するため、退職前に契約内容を確認しておく必要があります。
独立直後の仕事確保と並行して、保険や税金の手続きも早めに進めておくとスムーズです。独立後の国民健康保険・国民年金の負担額やフリーランスの青色申告で受けられる控除、屋号の決め方と開業届の書き方、独立前に準備すべき資金計画の立て方、退職して独立する際の開業届の出し方も合わせて確認しておくと、独立後の見通しが立てやすくなります。
実際に退職して独立し、仕事を確保した方の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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