定年退職後、平日に自由に動ける時間ができたことをきっかけに御朱印集め・寺社巡りを始める人が増えている。神社仏閣を訪れて参拝の証として御朱印を受け、朱印帳に一つずつ集めていく活動は、歩く運動になるうえに、日本各地の歴史や建築、季節の風景に触れられる楽しみもある。近場の寺社を回るだけでも十分に奥深く、旅行の計画づくりにもつながる趣味だ。ここでは始め方、マナー、費用、続けるコツを具体的にまとめる。
御朱印とは何か
御朱印は、神社や寺院を参拝した証として授与される墨書きと朱印の組み合わせで、寺社名や参拝日、本尊・祭神の名前などが記される。もともとは写経を納めた証として始まったとされ、単なるスタンプラリーではなく、参拝という行為に付随するものという理解を持って臨むと、より丁寧な気持ちで巡拝できる。朱印帳は専用の蛇腹折りの帳面で、寺社の授与所や文具店、観光案内所などで購入でき、価格は千五百円から三千円程度が相場だ。神社用と寺院用で朱印帳を分けている人も多く、これは神仏を分けて丁重に扱うという考え方に基づく慣習だ。写真を撮りながら巡る人も多くカメラを趣味にする楽しみ方もあわせて参考になる。
参拝の基本作法
神社では鳥居をくぐる前に一礼し、手水舎で手と口を清めてから拝殿に進む。お賽銭を入れ、二礼二拍手一礼が一般的な作法とされる。寺院では合掌して一礼し、宗派によって作法が異なる場合もあるため、迷ったら掲示されている案内板を確認するとよい。御朱印をいただく際は、参拝を済ませてから授与所に向かうのが基本の順序で、朱印帳は表紙を開いた状態で渡すと丁寧だ。温泉地の寺社と組み合わせて巡る楽しみ方は温泉・銭湯の楽しみ方でも紹介している。
費用と巡り方の実際
御朱印の初穂料・納経料は一件三百円から五百円が相場で、特別な御朱印(限定御朱印や見開きサイズ)は五百円から千円程度になることもある。交通費を除けば一日数か所を回っても数千円程度で楽しめる、費用のかからない趣味の一つだ。近場から始める場合は、自宅から公共交通機関で行ける範囲の寺社をいくつかリストアップし、季節や体調に合わせて無理のない距離から回っていくとよい。慣れてきたら「七福神めぐり」「三十三観音巡り」といった、あらかじめルートが決まっている巡礼コースに挑戦する人も多い。趣味にかける費用も含めた家計の考え方は退職後の家計簿の見直し方にまとめている。
御朱印帳の管理と記録
集めた御朱印帳は、参拝した日付順に見返すことで、自分の巡拝の歴史そのものになる。スマートフォンの地図アプリに訪れた寺社をマークしておくと、後から振り返りやすく、次にどこを回るか計画する際にも役立つ。御朱印帳が一冊いっぱいになると、寺社によっては専用の桐箱を用意してくれるところもあり、大切に保管する人も多い。
始めてからの変化
ある元製薬会社勤務の六十五歳女性は、退職後の運動不足解消を兼ねて近所の神社から御朱印集めを始めた。最初は近場を歩く程度だったが、次第に電車で少し足を伸ばして隣県の古刹まで訪れるようになり、一年間で三十か所以上を巡拝したという。「若いころは仕事で全国出張していたのに、地元の歴史ある神社には一度も行ったことがなかった」と振り返る。参拝の道中で出会った地元の人との会話や、寺社の由緒を調べる時間が新しい楽しみになったそうだ。地域の歴史を調べる楽しみは観光ガイドボランティアの始め方とも通じるところがある。一方で、人気の寺社では御朱印を待つ列に一時間以上並ぶこともあり、体力的にきつく感じた経験もあるという。混雑しやすい時期や時間帯を事前に調べ、朝一番に訪れるようにしてからは、待ち時間のストレスが減ったと話している。
旅行との組み合わせ方
御朱印集めは、国内旅行の目的の一つとしても人気がある。旅行先の主要な寺社をあらかじめ調べておき、観光の合間に立ち寄るという計画の立て方をする人が多い。夫婦や友人と一緒に、御朱印集めを兼ねた小旅行を年に数回計画するようになったという例もあり、退職後の旅行の目的作りとしても活用されている。退職後にやりたいことを整理する考え方は退職後にやりたいことリストの作り方でも紹介している。
限定御朱印と季節の楽しみ
近年は、桜や紅葉の季節限定、正月やお盆といった年中行事に合わせた特別な御朱印を授与する寺社が増えている。カラフルな絵柄が入った御朱印や、複数ページを使う「見開き御朱印」は特に人気が高く、授与期間が限られているため、情報をこまめに確認しておくと出会える機会が増える。多くの寺社は公式サイトやSNSで限定御朱印の授与情報を発信しており、スマートフォンで最新情報を確認しながら訪問先を決める人も多い。季節ごとに違う表情を見せる境内の景色も、御朱印集めの楽しみを一層深めてくれる要素になっている。
同じ趣味を持つ仲間との交流
御朱印集めは一人で気ままに楽しめる趣味である一方、同じ趣味を持つ仲間と情報交換をする楽しみもある。地域のカルチャーセンターや旅行会社が主催する「御朱印巡りツアー」に参加すれば、同世代の参加者と一緒にバスで複数の寺社を効率よく回ることができる。一人での外出が不安な人は、こうしたツアーから始めて土地勘や作法に慣れ、その後は自分のペースで個人巡拝に切り替えるという進み方もできる。ツアー参加費は交通費・昼食込みで五千円から一万円程度が相場になっている。
天候や体調に合わせた計画の立て方
寺社巡りは屋外での活動が中心になるため、夏の炎天下や真冬の寒さ、雨天時の参拝は体への負担が大きくなりやすい。夏場は早朝や日暮れ前の涼しい時間帯を選び、日傘や帽子、飲み物を用意して出かける人が多い。冬は防寒具に加えて、石段や砂利道で滑らないよう歩きやすい靴を選ぶことが欠かせない。あらかじめ天気予報を確認し、雨の日は屋根のある本堂内をゆっくり参拝できる寺院を選ぶなど、季節や天候に合わせて訪問先を柔軟に変える計画の立て方が長く続けるコツになっている。膝や腰に不安がある場合は、境内が平坦で階段の少ない寺社から選ぶと安心して巡拝できる。杖や歩きやすいスニーカーを併用しながら参拝している人も多く、無理をせず途中で腰かけて休める場所があるかを事前に調べておくと計画が立てやすい。
よくある質問
Q. 参拝の作法に自信がないが、マナー違反にならないか気になる。
A. 多くの寺社では作法の案内板が設置されており、それに従えば大きな失礼にはならない。分からない点があれば授与所の方に尋ねると丁寧に教えてくれることが多く、恐れずに参拝してよい。
Q. 御朱印を集めることは宗教的な行為になるのか。
A. 御朱印集めは参拝の証をいただく行為であり、特定の宗教への入信を意味するものではない。ただし神仏への敬意を持って臨むことは大切にされている慣習であり、スタンプラリー感覚での訪問は控えるべきとされている。
Q. 歩く距離が長い寺社巡りは体力的に不安だが。
A. 境内が広い寺社や山間部の神社は歩行距離が長くなることもあるため、事前に地図で境内の広さを確認し、休憩できる場所があるかを調べておくと安心だ。近場の平坦な寺社から始めて徐々に距離を延ばしていく人も多い。
実際に定年後に御朱印集め・寺社巡りを始めた方の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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