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遺言書の書き方:自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶか

2026 11/04
お金
2026年11月5日

定年を迎え、退職金や自宅などの資産が一通り確定してくると、「元気なうちに遺言書を書いておいた方がいいのだろうか」と考える人が増えてきます。遺言書がない場合、遺産は相続人全員による遺産分割協議で分け方を決めることになりますが、話し合いがまとまらず調停や審判に持ち込まれるケースは少なくありません。遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言があり、それぞれに手続きや費用、メリット・デメリットが異なります。この記事では両者の違いと財産目録の作り方を整理します。

目次

遺言書がないとどうなるか

遺言書がない場合、相続人全員が参加する遺産分割協議によって財産の分け方を決めます。法定相続分はあくまで目安であり、実際には自宅を誰が引き継ぐか、預貯金をどう分けるかで意見が割れることがあります。協議がまとまらなければ家庭裁判所での調停、それでも決着しなければ審判に進み、解決までに数年かかることもあります。相続税の申告期限は相続開始から10カ月以内と定められており、分割が決まらないまま申告期限を迎えると、配偶者の税額軽減など一部の特例が使えなくなる場合もあるため、早めに方向性を示しておく意味は小さくありません。相続税の基礎控除の考え方は相続時精算課税制度とは:生前贈与との使い分け、生前贈与を含めた資産承継の全体像は相続・生前贈与について今から考えることで整理しています。

自筆証書遺言:全文自筆で作る遺言書

書き方の基本ルール

自筆証書遺言は、遺言者本人が遺言の全文・日付・氏名を自筆で書き、押印することで作成できます。パソコンで作成した本文や録音・動画は無効とされますが、2019年の民法改正により、財産目録に限ってはパソコンでの作成や通帳のコピー添付が認められるようになり、各ページに署名押印すれば財産目録部分は自筆でなくてもよくなりました。日付が「令和8年11月吉日」のように特定できない記載になっていると、その遺言書自体が無効と判断されることがあるため、年月日を明確に書く必要があります。

法務局の自筆証書遺言保管制度

自筆証書遺言は自宅で保管すると紛失や改ざん、相続人による発見漏れのリスクがあります。これを補うのが2020年に始まった法務局の自筆証書遺言書保管制度です。遺言者本人が法務局に出向いて保管を申請すると、法務局が原本を保管し画像データも記録します。この制度を利用した遺言書は、家庭裁判所での検認手続きが不要になる点も実務上のメリットとされています。手数料は1件につき3,900円程度とされ、公正証書遺言に比べて低い負担で紛失・改ざんリスクを減らせます。

自筆証書遺言のメリット・デメリット

自筆証書遺言は費用をかけずに一人で作成でき、内容を誰にも知られずに済む点がメリットです。一方で、様式不備による無効のリスクや、法務局保管制度を使わない場合の紛失・改ざんリスク、家庭裁判所での検認手続きが必要になる場合がある点はデメリットといえます。

公正証書遺言:公証役場で作る遺言書

証人2名と公証人の関与

公正証書遺言は、公証役場で公証人に口述筆記してもらう形で作成する遺言書です。作成には証人2名の立ち会いが必要で、推定相続人や受遺者、その配偶者・直系血族は証人になれません。証人を用意できない場合、公証役場が証人を紹介してくれることもあります。原本は公証役場で保管されるため、自筆証書遺言のような紛失・改ざんのリスクはほとんどなく、家庭裁判所での検認も不要です。

費用の目安

公正証書遺言の作成手数料は、遺す財産の額に応じて日本公証人連合会が定める手数料令により決まります。目安として財産額1,000万円前後で手数料5万円程度、財産額が増えるほど段階的に手数料も上がっていきます。これに加えて証人への謝礼(自分で用意できない場合は1人あたり数千円から1万円程度)、司法書士や行政書士に文案作成を依頼した場合はその報酬が別途かかります。

公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言は公証人が関与するため様式不備による無効のリスクがほとんどなく、原本が公証役場で保管される安心感もあります。デメリットとしては、自筆証書遺言に比べて費用がかかること、証人2名を手配する必要があること、内容を公証人と証人に知られることが挙げられます。

自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを表で整理すると、以下のようになります。

項目 自筆証書遺言 公正証書遺言
費用 自分で作成すれば無料。法務局保管制度を利用する場合は1件3,900円程度 財産額に応じた手数料がかかる(目安として財産額1,000万円前後で5万円程度)。証人への謝礼や専門家への依頼費用が別途かかることもある
証人の要否 不要 証人2名の立ち会いが必要
紛失・改ざんリスク 自宅で保管する場合は紛失・改ざん・発見漏れのリスクがある(法務局保管制度を利用すれば軽減できる) 原本が公証役場で保管されるため、紛失・改ざんのリスクはほとんどない
検認手続きの要否 原則必要(法務局保管制度を利用した場合は不要) 不要

財産目録の作成方法

財産目録には、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号・残高、不動産は登記事項証明書に記載された所在地・地番・家屋番号、有価証券は証券会社名・銘柄・数量を記載します。通帳のコピーや登記事項証明書、固定資産税納税通知書を添付すると、相続開始後に相続人が財産を特定しやすくなります。自宅を含む不動産の評価やその後の活用方針を考えるうえではリバースモーゲージの仕組みとリスク:老後資金として使えるかや老後資金の取り崩し方を扱った老後資金の取り崩し方:定率 vs 定額のどちらが安心かも財産全体を俯瞰する材料になります。負債(住宅ローンの残債など)がある場合も財産目録に記載し、プラスの財産とマイナスの財産の両方を漏れなく書き出しておくことが、相続人の手続き負担を左右します。

作成後に見直しが必要になる場面

遺言書は一度作成して終わりではなく、再婚・離婚、子どもの誕生、不動産の売却・購入、財産構成の大きな変化があった際には内容が実情と合わなくなることがあります。たとえば遺言書に記載した不動産をすでに売却してしまった場合、その部分の記載は実行できなくなり、遺言全体の解釈に影響することもあります。公正証書遺言を作り直す場合は再度手数料がかかるため、大きなライフイベントの後には内容を見直す機会を作っておくと、実情との食い違いを防げます。

実際の作成例

ある元自営業の六十代男性は、長年連れ添った配偶者と、疎遠になっていた前妻との間の子どもがいたため、遺産分割で揉める可能性を懸念していました。司法書士に相談したうえで公正証書遺言を作成し、証人は司法書士事務所に紹介してもらったといいます。「自分の言葉で理由まで説明できたことで、家族に想いが伝わる遺言書になったと感じている」と話しており、公証役場での作成に3万円台の手数料がかかったものの、家族間の紛争を避けられる安心感の方が大きかったと振り返っています。判断能力が低下した場合の備えとしては成年後見制度の基礎知識:法定後見と任意後見の違いもあわせて検討されることが増えています。

遺言書の作成とあわせて検討しておきたい周辺の制度もあります。闘病生活が長引いた場合に備え、傷病手当金を受給中の退職タイミング調整を把握しておくと、遺言書を見直すタイミングも判断しやすくなります。定年後の暮らし方や心の持ち方については定年後1年で感じる後悔とその対処法で紹介している声も参考になります。会社の福利厚生を使い切ってから退職したい場合は退職前に使い切りたい会社の福利厚生(カフェテリアポイント・保養所・自己啓発補助)で具体的な項目を確認できます。離婚歴があり年金分割の対象になる場合は、遺産分割に先立って年金分割制度(離婚時)の基礎知識も確認しておくと資産全体の整理がしやすくなります。

よくある質問

Q. 自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選べばよいですか?

費用を抑えて一人で作成したい場合は法務局保管制度を使った自筆証書遺言、無効リスクを極力減らし紛争を避けたい場合は公正証書遺言が選ばれる傾向にあります。財産構成が複雑な場合や相続人間の関係が難しい場合は、公証役場や司法書士会の相談窓口で個別に確認しておくと安心につながります。

Q. 一度書いた遺言書は書き直せますか?

遺言書は何度でも書き直すことができ、日付の新しいものが優先されます。自筆証書遺言を書き直す場合は古いものを破棄するか、内容が矛盾しないよう明記する必要があります。公正証書遺言も新たに公正証書を作成することで内容を変更できます。

Q. 遺留分を無視した遺言書は有効ですか?

配偶者や子どもなど一定の相続人には遺留分という最低限の取り分が法律で保障されており、これを侵害する内容の遺言書自体は作成できますが、遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます。特定の相続人に多く遺したい事情がある場合は、その理由を付言事項として書き添える人もいますが、法的な効力そのものは遺留分の規定が優先されます。

実際に遺言書を作成した六十代の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。

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