メンタル不調を感じて退職を考えているとき、「退職の前にまず医療機関を受診すべきか」で迷う人は少なくありません。受診の有無や診断内容は、休職や傷病手当金、退職後の失業保険の扱いにまで影響するため、どの医療機関を選ぶかは単に体調の問題だけでなく、その後の手続き全体に関わってきます。この記事では、メンタル不調で退職を考える前に受診すべき医療機関の選び方と、受診がその後の手続きにどう関わるかを整理します。
精神科・心療内科のどちらを選ぶか
精神科と心療内科は、どちらもメンタル不調を診る診療科ですが、精神科はうつ病や適応障害、不安障害などの精神疾患そのものを対象とし、心療内科はストレスによる身体症状(胃痛、頭痛、不眠など)を中心に診る傾向があります。退職を考えるほどの強いストレスや不眠、意欲の低下が続いている場合は、精神科での診断を受けることで、休職や退職後の手続きに必要な診断書を発行してもらいやすくなります。どちらを選ぶか迷う場合は、まずかかりつけ医に相談し、適切な診療科を紹介してもらう方法もあります。
診断書が持つ意味を理解しておく
診断書は、休職や傷病手当金の申請、退職後の失業保険の受給期間延長の手続きなど、さまざまな場面で必要になる書類です。退職前に受診しておくことで、退職理由と体調不良の関連を示す記録が残るという点は、後から特定理由離職者としての判断を受ける際にも役立つ可能性があります。逆に、受診せずに退職してしまうと、体調不良が退職理由であったことを証明する材料が手元になくなってしまいます。
受診先を選ぶ際に確認したいポイント
医療機関を選ぶ際は、休職や診断書の発行に慣れているかどうか、会社の産業医と連携した対応をしてもらえるかどうかも確認材料になります。勤務先に産業医がいる場合は、まず産業医面談を受け、そこから適切な医療機関を紹介してもらう流れもあります。産業医は治療そのものを行う立場ではありませんが、就労の可否や勤務環境の調整について、会社と本人の間に立って意見を出してくれる存在です。初診までの待機期間が長い医療機関も多いため、体調不良を感じた段階で早めに予約を取っておくことが望ましいです。
退職を決める前に、主治医の診断書と産業医の意見 を両方確認しておくと、休職か退職かの判断材料が揃いやすくなります。
休職か退職かを決める前に確認すること
メンタル不調を感じている段階で、必ずしも退職が最初の選択肢になるわけではありません。勤務先に休職制度がある場合、まずは休職して治療に専念し、体調が回復した段階で復職を目指すという選択肢もあります。休職期間は会社の規定によって異なり、勤続年数に応じて期間が長くなる制度を設けている会社もあります。休職中に傷病手当金を受給しながら療養し、復職が難しいと判断した時点で退職を選ぶという順序を踏むことで、退職後の生活資金についても見通しを立てやすくなります。復職の可否を判断する際は、主治医の診断書だけでなく、産業医が勤務環境や業務内容を踏まえて意見を出すこともあるため、両方の意見を踏まえて検討することが望ましいです。
受診のタイミングで変わった2つのケース
ある元広告代理店職の30代男性は、不眠と意欲低下が3週間続いた時点で心療内科を受診し、適応障害の診断書を受け取りました。診断書をもとに会社と休職の相談を行い、傷病手当金を受給しながら療養し、体調が回復した段階で退職を決めました。退職後も傷病手当金の継続給付の条件を満たしていたため、生活費の見通しを立てながら療養を続けることができたといいます。
一方で、ある元事務職の40代女性は、体調不良を感じていたものの受診せずに退職を決めてしまいました。退職後に体調がさらに悪化し、精神科を受診したところ、退職前から症状が出ていたことが分かりましたが、退職時点での診断書がなかったため、傷病手当金の継続給付の条件を満たせず、生活費の見通しが厳しくなってしまったといいます。本人は「体調に違和感を感じた時点で、一度受診しておけばよかった」と振り返っています。
退職後の生活を見据えた受診の位置づけ
退職後も通院を続ける場合、医療費の負担を軽減するための自立支援医療(精神通院医療)という制度があり、対象となる治療の医療費の自己負担割合が軽減される場合があります。利用には自治体への申請と診断書の提出が必要で、具体的な軽減内容は世帯の所得状況によって異なります。退職後に通院を続ける予定がある場合は、早めに自治体の窓口や通院先の医療機関に相談しておくとよいでしょう。
セカンドオピニオンを検討する場合
最初に受診した医療機関での診断や治療方針に納得できない場合、セカンドオピニオンとして別の医療機関を受診することも選択肢の一つです。特に、休職や退職といった大きな決断につながる診断書が関わる場合は、複数の医師の意見を聞いてから判断したいと考える人もいます。セカンドオピニオンを受ける際は、最初の医療機関で受けた検査結果や診断内容の情報提供を依頼し、重複した検査を避けながら相談を進める方法が一般的です。精神保健福祉センターでは、医療機関の選び方や治療に関する相談を受け付けている場合があるため、どの医療機関を受診すべきか迷った際の相談先として活用できます。受診先を変える場合は、通院の継続性が診断の信頼性にも関わるため、できるだけ早い段階で方針を決めておくことが望ましいとされています。
受診先を決めたあとは、診断書の取得や退職後の生活設計まで見通しておくと手続きがスムーズになります。適応障害による退職で必要になる書類は適応障害による退職で必要になる書類、退職後に再就職までの期間をどう過ごすかはメンタル不調での退職後に再就職までの期間の過ごし方で紹介しています。病気の再発リスクを抱えながらの退職判断は病気の再発リスクを抱えながらの退職判断、退職後に健康保険証がいつまで使えるかは退職後に健康保険証はいつまで使えるかで解説しています。
よくある質問
精神科を受診すると会社に知られますか
受診の事実が自動的に会社に伝わることはありません。診断書を提出したり、休職の相談をしたりする際に、本人の同意のもとで会社に伝わる形になります。どこまで情報を共有するかは、人事担当者と相談しながら決めることができます。
受診せずに退職してしまった場合、取り返しはつきませんか
退職後に受診して診断を受けることは可能ですが、退職前から症状があったことを証明する記録が残っていないと、傷病手当金の継続給付などで不利になる場合があります。退職後でも早めに受診し、今後の生活や就労の見通しについて医師に相談することが重要です。
どの医療機関にかかればよいか分からない場合はどうすればよいですか
かかりつけの内科医に相談して紹介してもらう方法や、自治体の精神保健福祉センターに相談する方法があります。産業医がいる勤務先であれば、産業医面談を通じて適切な医療機関を案内してもらえることもあります。
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実際にメンタル不調での受診と退職の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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