マイナンバーカードとスマートフォン決済は、今や日常生活の中で避けて通れない存在になった。周囲では当たり前のように使われているものの、いざ自分で調べようとすると専門用語ばかりで途中で諦めてしまった、という人は多いのではないか。デジタル化そのものへの焦りや不安との向き合い方はデジタル化に取り残される不安との向き合い方で取り上げているので、ここでは不安の中身に立ち入らず、マイナンバーカードとキャッシュレス決済について「今さら聞けない」基本の操作と考え方を、最初の一歩から具体的に整理する。
マイナンバーカードでできること
コンビニで証明書を取得する
マイナンバーカードがあれば、住民票の写しや印鑑登録証明書、戸籍証明書などを全国のコンビニのマルチコピー機から取得できる。役所の窓口が開いている平日の日中に行けない人でも、早朝や夜間、休日でも取得できるのが大きな利点だ。手順はカードをマルチコピー機に置き、画面の案内に沿って暗証番号を入力し、必要な証明書の種類を選んで発行するという流れで、一度覚えてしまえば数分で完了する。このほかe-Taxでの確定申告など、マイナンバーカードを使ってオンラインで完結できる行政手続きも増えている。
健康保険証との一体化
マイナンバーカードを健康保険証として利用する登録をしておくと、通院時にカード一枚で保険資格の確認ができるようになる。医療機関の受付にあるカードリーダーにマイナンバーカードを置き、顔認証か暗証番号のいずれかで本人確認を行うだけで手続きが済む。初めて利用する医療機関でも、過去の薬剤情報や特定健診の結果を医師と共有できる仕組みがあり、退職後の健康保険の切り替えとあわせて登録しておくと、その後の通院がスムーズになる。
スマホ決済の仕組みと使い方の基本
スマホ決済には大きく分けて、バーコードやQRコードを画面に表示して読み取ってもらう方式と、電子マネーのようにスマートフォンを端末にかざして支払う方式の二種類がある。どちらも事前にアプリをインストールし、銀行口座やクレジットカードを登録するか、現金でチャージしておく必要がある。実際に店頭で支払う際は、レジで「○○(決済アプリ名)で」と伝え、画面に表示されたコードを提示するか、店員が読み取り機で読み取るのを待つだけでよい。
ある元銀行員の六十代女性は、退職後に近所のスーパーでキャッシュレス決済を導入する人が増えているのを見て、思い切って一つのアプリだけを入れてみたという。最初はレジで操作に戸惑い、後ろに並ぶ人の視線が気になったというが、数回使ううちに手順を体で覚え、今では財布を持たずに買い物に行くことも増えたと話す。複数の決済手段を同時に覚えようとせず、まず一つに絞って使い込むことが、操作への抵抗感を早く解消するコツだと言える。
セキュリティ面で気をつけるべきポイント
暗証番号の管理
マイナンバーカードには複数の暗証番号が設定されており、証明書取得や確定申告など用途によって使い分ける仕組みになっている。誕生日や電話番号など推測されやすい数字は避け、他のカードの暗証番号とも異なるものを設定しておくことが基本だ。番号を書いたメモをカードと同じ財布に入れておくと、紛失時に両方が同時に第三者の手に渡ってしまうため、メモは自宅の別の場所に保管しておく方が安全になる。
フィッシング詐欺への注意
「マイナンバーカードの有効期限が切れます」「決済アプリで不正利用が検知されました」といった内容のメールやSMSを送りつけ、偽のログイン画面に誘導して個人情報を盗み取る手口が広がっている。公的機関や決済事業者が、メールやSMSのリンクから暗証番号やクレジットカード情報の入力を求めることは基本的にない。届いたメッセージのリンクを直接タップするのではなく、公式アプリや公式サイトを自分でブラウザに入力して開き直し、本当にそのような通知が来ているかを確認する習慣をつけておくと、こうした手口に引っかかりにくくなる。不審な連絡について詳しくは特殊詐欺への対策でも取り上げているので、あわせて確認しておくと被害を防ぐ手がかりが増える。
不審な連絡に気づいた実例
ある元会社員の六十代男性は、スマホ決済アプリの名前を騙るSMSで「アカウントに異常なログインがありました。以下のリンクから本人確認をしてください」という文面を受け取った。焦ってリンクをタップしそうになったが、送信元の番号が普段アプリから届く通知番号と違うことに気づき、リンクは開かずにアプリを直接起動して確認したところ、アプリ内には該当する通知が一切なかったという。この経験から、彼は「メッセージの内容ではなく、送信元と、アプリを開いた時に同じ情報があるかどうかで判断する」という自分なりの基準を持つようになったと話す。届いたメッセージだけを信じるのではなく、必ず別の経路で事実を確認するという一手間が、被害を防ぐ分かれ目になる。
生体認証やロック機能を使う
スマートフォン本体には、指紋認証や顔認証でロックを解除する機能が備わっている。決済アプリを開く際にもこの認証を必須にしておけば、スマートフォンを紛失したり誰かに操作されたりした場合でも、決済アプリまでたどり着かれるリスクを大きく減らせる。設定はスマートフォンの「設定」アプリの中にあるセキュリティ関連の項目から行え、初期設定の段階で済ませておくと、後から慌てて対応する必要がなくなる。
最初の一歩として何から始めるか
マイナンバーカードとスマホ決済のどちらから手をつけるか迷う場合は、生活の中で使う頻度が高い方から始めるとよい。すでにマイナンバーカードを持っているなら、まずは健康保険証としての利用登録とコンビニでの証明書取得の二つだけを覚えれば、日常のほとんどの場面はカバーできる。スマホ決済については、普段利用するスーパーやコンビニで対応しているアプリを一つ選び、まず千円程度の少額をチャージして試しに使ってみると、仕組み全体を体で理解しやすい。シニア向けのスマホ教室では、これらの初期設定を実機を使いながら一緒に確認できるので、操作に不安がある場合の最初の相談先として活用できる。
よくある質問
Q. マイナンバーカードを紛失した場合はどうすればいいですか。
A. 気づいた時点ですぐにマイナンバー総合フリーダイヤルに連絡し、カードの利用を一時停止してもらう。その後、警察に遺失届を提出し、市区町村の窓口で再交付の手続きを行う。カードの裏面や案内書類に記載されている連絡先を、あらかじめ携帯電話に登録しておくと、いざという時にすぐ連絡できる。
Q. スマホ決済で残高が足りない場合、支払いはどうなりますか。
A. 多くのアプリでは、チャージ残高が不足していると決済時にエラーが表示され、支払いが完了しない仕組みになっている。銀行口座やクレジットカードを紐づけて自動チャージを設定していれば、残高不足を気にせず利用できるが、設定していない場合は事前にアプリの画面でチャージ残高を確認しておくと安心して使える。
Q. 現金しか使えない店もまだ多いですが、無理に切り替える必要はありますか。
A. 現金とキャッシュレス決済は併用が前提で、どちらか一方に統一する必要はない。普段使う店舗の一つでキャッシュレス決済に慣れておけば、対応していない店では従来通り現金で支払えばよく、選択肢を増やす感覚で取り入れると気負わずに始められる。
実際にマイナンバーカードやスマホ決済に慣れていった体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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