退職後にどんな場合に確定申告が必要になるかがわかっても、「毎年2月に税務署の窓口に並ぶのは面倒」「用紙の書き方がわからない」と感じる人は多いはずです。実はe-Taxを使えば、自宅のパソコンやスマートフォンから電子申告でき、還付金の入金も紙の申告より2〜3週間ほど早まります。この記事では、e-Taxの申告方法をこれから初めて使う人向けに、事前準備からログイン、実際の入力、よくあるつまずきポイントまで手順に沿って説明します。
e-Taxとは何か:紙の申告との違い
e-Taxは国税庁が運営するオンライン申告システムで、確定申告書の作成から提出までをインターネット上で完結できます。紙の申告書だと税額を手計算またはコピー機で複写した用紙に手書きする必要がありますが、e-Taxが連携する「確定申告書等作成コーナー」では、年金額や社会保険料の金額を入力するだけで税額が自動計算されます。国税庁の発表では、e-Tax利用者の還付金の入金は申告からおおむね3週間程度、書面提出の場合は1か月半から2か月程度かかるとされており、この差は還付を早く受け取りたい退職者にとって無視できないメリットです。また、マイナポータル連携を使えば、公的年金等の源泉徴収票の金額が自動的に申告書へ反映される機能もあり、入力ミスの防止にもつながります。
事前準備:必要なものを揃える
マイナンバーカード方式
最も一般的な方法は「マイナンバーカード方式」です。マイナンバーカードと、読み取り用のICカードリーダー、またはマイナンバーカード読み取りに対応したスマートフォンを用意します。近年はスマートフォンだけで完結できる「スマホ用電子証明書搭載サービス」も普及しており、一度マイナンバーカードでスマホに証明書を搭載すれば、以降はカードなしでもスマホだけでログインできるようになります。マイナンバーカードの署名用電子証明書の有効期限(発行から5回目の誕生日まで)が切れていないかも申告前に確認しておきましょう。
ID・パスワード方式
マイナンバーカードを持っていない、またはICカードリーダーの用意が難しい場合は、税務署で事前に発行してもらう「ID・パスワード方式」も選べます。最寄りの税務署の窓口で本人確認をしたうえでID・パスワードの発行を受ければ、次回以降はそのIDでe-Taxにログインできます。ただしこの方式は暫定的な対応として位置づけられており、国税庁は将来的にマイナンバーカード方式への一本化を進める方針を示しているため、これから初めて準備する人はマイナンバーカード方式を選んでおくほうが長い目で見て手間が少なくなります。
申告の流れ:退職者の典型的なケースで解説
会社員として長年勤め、退職金を受け取り、公的年金の受給も始まっているという典型的なケースを例に流れを説明します。
1. 確定申告書等作成コーナーにアクセス
国税庁の確定申告書等作成コーナーのサイトを開き、「作成開始」からマイナンバーカード方式でログインします。マイナポータルアプリと連携させておくと、公的年金等の源泉徴収票のデータを一部の年金保険者(日本年金機構など連携対応先)から自動取得できます。
2. 収入情報の入力
公的年金等の源泉徴収票に記載された年金の収入金額、源泉徴収税額、社会保険料の金額を入力します。退職金を受け取った年であれば、退職金の源泉徴収票の情報も別項目で入力しますが、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出済みで源泉徴収だけで課税が完結している場合、通常は退職所得について改めて確定申告する必要はありません。医療費控除やふるさと納税の寄付金控除を受ける場合は、この段階で該当する控除項目に金額を追加入力します。医療費控除では1年分の領収書をもとに医療費控除の明細書を作成する必要がありますが、e-Taxなら合計金額を入力欄に打ち込むだけで済み、紙の明細書のように1件ずつ手書きで転記する手間がかかりません。
3. 税額の自動計算と確認
入力が終わると、所得税額・還付額(または納付額)が自動計算されて画面に表示されます。紙の申告のように税額速算表を自分で参照する必要がなく、控除を追加した場合の税額の変化もその場で確認できます。
4. 電子署名と送信
最後にマイナンバーカードの暗証番号(利用者証明用電子証明書のパスワード)を入力して電子署名を行い、そのまま送信すれば申告完了です。受付結果はマイナポータルまたはe-Taxのメッセージボックスで確認できます。
初めてのe-Taxでつまずきやすいポイント
マイナンバーカードの暗証番号を数回間違えるとロックがかかり、市区町村窓口での再設定が必要になる点は特に注意が必要です。暗証番号には「署名用電子証明書」(英数字混在、6〜16桁)と「利用者証明用電子証明書」(数字4桁)の2種類があり、この2つを混同して入力ミスを繰り返すケースが多く見られます。またスマートフォンでの読み取りは機種によって対応の可否が異なり、対応機種は総務省・国税庁のサイトで随時更新されているため、申告直前ではなく余裕をもって事前に自分の機種で確認しておくと安心です。年金の源泉徴収票のマイナポータル自動連携も、連携先の年金保険者や対象年によって反映されないケースがあるため、自動反映された金額と手元の源泉徴収票の金額が一致しているか必ず照合しましょう。ブラウザ経由での申告は推奨環境(対応OS・ブラウザのバージョン)が指定されており、古いブラウザだとカードの読み取り画面が正しく表示されないこともあります。
紙の申告に戻したくなったときは
e-Taxでの入力途中でも、確定申告書等作成コーナーでは作成中のデータを保存し、印刷して郵送や窓口提出に切り替えることができます。デジタル操作に不安がある場合は、税務署や確定申告会場に設置されている相談コーナーで、職員に画面操作を教えてもらいながらその場でe-Tax申告を完了させることも可能です。相談窓口を利用する際の準備として、マイナンバーカードと源泉徴収票、控除証明書一式を持参すると、その場でスムーズに手続きが進みます。
よくある質問
Q. スマートフォンだけで申告を完結できますか。
A. スマホがマイナンバーカードの読み取りに対応していれば、ICカードリーダーなしでスマホだけで申告を完結できます。国税庁の確定申告書等作成コーナーにはスマホ専用の入力画面も用意されており、画面の指示に従って進めれば、パソコンがなくても最後まで手続きできます。
Q. e-Taxでの申告はいつからいつまでできますか。
A. 通常の確定申告期間は2月16日から3月15日ですが、還付申告(税金が戻ってくる申告)については、対象年の翌年1月1日から5年間、いつでも提出できます。年金生活者で還付が発生するケースが多いため、確定申告期間の混雑を避けて1月中に済ませてしまう人も少なくありません。なお確定申告の内容は翌年度の住民税額にも反映されるため、還付だけでなく住民税の通知が届いたときの金額とのつながりも意識しておくと家計管理がしやすくなります。
Q. マイナンバーカードを持っていない場合、e-Taxは使えませんか。
A. 税務署で発行を受けるID・パスワード方式であれば、マイナンバーカードなしでもe-Taxを利用できます。ただし発行には税務署窓口での本人確認が一度必要なため、マイナンバーカードを作る予定があるなら、最初からマイナンバーカード方式を選んだほうが長期的には手間が少なくなります。
実際にe-Taxで確定申告をした退職者の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


コメント