確定申告で社会保険料控除を申告するとき、「どの書類をどこから取り寄せればよいのか分からない」と手が止まる人は少なくありません。国民年金保険料には毎年届く控除証明書がありますが、国民健康保険料や介護保険料には証明書自体が発行されない仕組みになっており、自分で支払額を確認して記入する必要があります。この違いを知らずに申告漏れをしてしまうと、本来受けられるはずの控除を取りこぼすことになります。
社会保険料控除の対象になるもの
社会保険料控除は、本人や生計を同じくする配偶者・親族の国民年金保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料、国民年金基金の掛金などを支払った場合に、その全額を所得から差し引ける制度です。上限額の定めがなく、支払った分だけ全額が控除対象になる点が、上限のある生命保険料控除や医療費控除とは異なります。
国民年金保険料控除証明書の入手方法
国民年金保険料を納めている人には、日本年金機構から毎年10月下旬から11月頃にかけて「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」が郵送されます。その年の1月から9月までに納付した実績と、10月から12月分の納付見込み額が記載されており、確定申告書に添付するか、e-Taxで申告する場合は証明書に記載された内容を入力する形になります。マイナポータル連携を設定していれば、控除証明書のデータを自動的に取得して確定申告書に反映させることも可能です。
国民健康保険料・介護保険料は証明書不要
国民健康保険料と介護保険料(65歳以上で年金天引きされている分も含む)については、控除証明書そのものが発行されません。確定申告書の社会保険料控除の欄には、実際に1年間で支払った金額を自分で計算して記入します。年金天引きされている介護保険料は、日本年金機構から送られる「公的年金等の源泉徴収票」に天引き額が記載されているため、そこから金額を確認できます。国民健康保険料は市区町村から送付される「国民健康保険料納付済額のお知らせ」や、納付書の控え、口座振替の通帳記録などをもとに1年間の合計額を集計する必要があります。
ある六十三歳男性のケース
ある自営業の六十三歳男性は、確定申告の直前になって国民年金の控除証明書を紛失していることに気づきました。慌てて日本年金機構に電話をしたところ、「ねんきんネット」に登録していればオンラインで再発行の申請ができると案内され、その場でパソコンから手続きをして数日後に再発行分を受け取ることができたといいます。「毎年届く書類だからと油断して保管を怠っていた」と振り返り、翌年からは届いた時点でスキャンしてデータ保存するようにしたそうです。同じ時期に国民健康保険料の納付済額のお知らせも一緒に保管する習慣をつけたことで、翌年以降の確定申告にかかる時間も大幅に短縮できたといいます。
控除証明書を紛失した場合の再発行手順
国民年金保険料控除証明書を紛失した場合は、ねんきんネットにログインして電子データをダウンロードするか、日本年金機構の「ねんきん加入者ダイヤル」に電話して再発行を依頼する方法があります。電話での依頼は本人確認のうえ、再発行分が郵送されるまで1週間から2週間程度かかることがあるため、確定申告の期限(通常3月15日)が迫っている場合は早めに手続きすることが重要です。窓口が近い場合は、年金事務所に直接出向いて再発行を申請することもできます。
家族の保険料を代わりに払った場合
同居している配偶者や子どもの国民年金保険料を、自分の口座から代わりに支払っている場合、その金額は支払った本人の社会保険料控除に含めることができます。この場合、控除証明書は保険料を負担している本人ではなく、年金の被保険者本人(実際に年金に加入している家族)宛てに届くため、証明書に記載された氏名と申告する人が異なっていても問題ありません。確定申告書には「誰の保険料を負担したか」を記載する欄があるため、家族分をまとめて申告する場合はそこに正確に記入します。控除を受けるのは実際に費用を負担した人であり、必ずしも所得が最も高い家族が申告しなければならないわけではありませんが、税負担の軽減効果を考えると所得税率の高い人がまとめて申告したほうが有利になるケースが多く見られます。
保険料を前納した場合の控除の扱い
国民年金保険料を2年分などまとめて前納した場合、控除証明書には前納した全額が記載されますが、確定申告の際には「全額をその年に控除する方法」と「各年分に按分して毎年控除する方法」のどちらかを選べます。前納した年の所得が高い場合は全額を一括で控除したほうが節税効果は大きくなりますが、退職を控えて翌年以降に所得が下がる見込みがある場合は、按分して各年に分けたほうが結果的に控除を無駄なく使い切れることもあります。控除証明書の摘要欄に按分額の記載があるため、どちらの方法を選ぶかによって記入する金額が変わる点に注意してください。
付加保険料も控除の対象
国民年金の付加保険料(月額400円を上乗せして納めることで将来の年金額を増やす制度)を納めている場合も、社会保険料控除の対象に含まれます。控除証明書には通常の保険料とあわせた合計額が記載されるため、別途申告する必要はありませんが、証明書の内訳欄で付加保険料分が含まれているかどうかを確認しておくと、金額の見落としを防げます。
他の控除とあわせて申告する
社会保険料控除は、医療費控除や生命保険料控除などと同時に確定申告書に記載することで、まとめて還付を受けられます。医療費控除の申告方法は医療費控除の申告方法、セルフメディケーション税制の活用はセルフメディケーション税制の仕組みで解説しています。退職後の確定申告全体の流れは退職後の確定申告のやり方、e-Taxでの申告方法はe-Taxで確定申告をする方法、個人年金保険に加入している場合の控除は個人年金保険と税金の関係、各種保険の見直しについては保険の見直し方も参考になります。
よくある質問
Q. 国民健康保険料の年間支払額はどこで正確に確認できますか。
A. 市区町村の国保年金課の窓口や電話で「納付証明書」の発行を依頼すれば、正式な年間支払額を確認できます。多くの自治体では1月中旬から下旬にかけて前年分の納付額のお知らせを送付しているため、それが届くのを待って申告する人も多くいます。
Q. 控除証明書のデータをマイナポータルで自動連携できますか。
A. マイナポータルとねんきんネットを連携させておけば、国民年金保険料控除証明書のデータをe-Taxの確定申告書作成コーナーに自動反映させることができます。事前に連携設定をしておくと、毎年の申告作業がスムーズになります。
Q. 年の途中で会社の厚生年金から国民年金に切り替わった場合はどうなりますか。
A. 厚生年金保険料は給与から天引きされているため源泉徴収票に記載され、国民年金保険料の分だけ別途控除証明書で確認します。年の途中で切り替わった場合は両方の書類を確認し、それぞれの期間の支払額を合算して申告する必要があります。退職と同時に国民年金へ切り替えた月の保険料が漏れやすいため、切り替え月の納付記録も忘れずに確認してください。
実際に社会保険料控除証明書の再発行や家族分の申告に取り組んだ体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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