定年退職後、動物が好きでも「もう一度ペットを飼うのは体力的にも金銭的にも不安がある」という人は少なくありません。10年、20年先まで面倒を見きれるか分からない、住まいがペット不可の集合住宅だといった事情もあるでしょう。そうした人たちの受け皿になっているのが、保護犬猫の施設や地域猫活動を支えるボランティアです。飼い主にならなくても、動物と関わりながら地域の役に立てる活動として、退職後に始める人が増えています。
どんな活動があるのか
保護施設でのお世話
動物愛護センターや民間の保護団体が運営するシェルターでは、犬猫の給餌や清掃、散歩、人に慣れさせるための触れ合いといった日々の世話を手伝うボランティアを常時募集しています。特別な資格は不要で、動物取扱責任者の資格を持つ職員の指示のもとで動くのが基本です。
譲渡会の運営サポート
保護した犬猫を新しい飼い主に引き合わせる譲渡会では、会場設営や受付、希望者への説明、写真撮影といった運営面の人手が常に不足しています。月1〜2回、数時間の参加から関われるため、定期的な予定を空けにくい人にも向いています。
地域猫のTNR活動
TNRとは、野良猫を捕獲(Trap)し、不妊去勢手術(Neuter)を受けさせたうえで元の場所に戻す(Return)活動の頭文字です。無秩序な繁殖を減らし、近隣トラブルを抑える目的で自治体と地域住民が連携して行っています。捕獲器の設置や見回り、餌やり場の管理といった役割があり、猫との距離感を保ちながら地道に続ける根気が求められます。
一時的に預かる「フォスター」
保護されたばかりで人に慣れていない犬猫や、子猫・病気療養中の個体を、譲渡先が決まるまでの数週間から数か月だけ自宅で預かる「フォスター」という関わり方もあります。終生飼育の責任は負わず、期間を区切って世話をするため、定年後に「もう一度動物のいる暮らしを試してみたいが、最後まで面倒を見る自信はまだない」という人の橋渡しになっています。フード代や医療費は団体が負担する場合が多く、預かり中の相談窓口も用意されています。
活動先の見つけ方
まず確認したいのが、お住まいの自治体が設置する動物愛護センターや保健所のウェブサイトです。多くの自治体がボランティア登録の窓口を設けており、活動内容や必要な事前講習が案内されています。加えて、認定NPO法人として活動する保護団体もあり、各団体のサイトやSNSで随時ボランティアを募集しています。元銀行員の68歳、Cさんは、通っていた動物病院の掲示板で地元のTNRボランティア団体を知り、まずは月1回の見回りから参加を始めたといいます。半年ほど続けるうちに捕獲器の扱いにも慣れ、今では新人ボランティアへの説明役も任されるようになったそうです。「最初から大きな役割を背負おうとせず、できる範囲を団体側に伝えておくのがコツだった」と振り返っています。
時間の負担と体力面での注意
保護施設での世話は、猫アレルギーの有無や、しゃがんでの作業・重い餌袋の運搬など体力を使う場面がある点を踏まえて選ぶ必要があります。屋外でのTNR活動は早朝や深夜に及ぶこともあり、真夏や真冬は熱中症・低体温症のリスクも考慮しなければなりません。多くの団体では週1回2時間程度から参加できる仕組みを用意しているため、まずは短時間の活動で自分の体力と相性を確かめてから頻度を増やす人が多いです。噛まれる・引っかかれるといった事故に備え、活動中の保険に加入している団体を選ぶことも確認しておきたい点です。人と場所によっては夜間の見回りで暗い道を歩くこともあるため、懐中電灯や滑りにくい靴を用意し、必ず2人以上で行動する団体の運用ルールに沿うようにします。
ペットを飼わずに動物と関わる意味
保護犬猫ボランティアの特徴は、動物への愛情を注ぎながらも、最終的な飼育責任を自分一人で背負わずに済む点にあります。旅行や帰省で家を空ける予定があっても、活動を休めば済むため、フルタイムの飼い主業とは違う関わり方ができます。一方で、譲渡会を通じて新しい家族と出会う瞬間に立ち会える喜びは、飼育とはまた違う形の達成感につながります。将来的に自宅で犬や猫を迎える選択肢を検討している人にとっても、ボランティア経験は飼育の実際を知る予行演習になります。ペットを自宅に迎える選択についてはペットを迎えるという選択で詳しく取り上げています。
活動を通じて広がる人間関係
保護施設や地域猫活動には、年齢も経歴も異なるボランティアが集まります。定年後に感じやすい孤独感を和らげる場としても機能しており、活動後に情報交換をする時間が新しい交友関係のきっかけになることもあります。地域とのつながりを作る取り組みについては地域とのつながりを作る:自治会・町内会に馴染むコツ、「孤独感」との向き合い方:孤立を防ぐ小さな工夫も参考になります。もう少し幅広くボランティア全般の選択肢を比較したい場合はボランティア・地域活動という選択肢、活動を通じてNPOへの関わり方を知りたい場合はNPO・市民活動への参加という選択肢も合わせてご覧ください。休日を持て余しがちな人にとって、決まった曜日に施設へ足を運ぶ習慣そのものが生活のリズムを作ってくれるという声もよく聞かれます。
自治体の助成制度も確認しておく
TNR活動にかかる不妊去勢手術の費用は、動物病院や地域によって雄で1万円前後、雌で1万5千円前後が目安ですが、多くの自治体が独自の助成制度を設けています。たとえば東京都のある区では1頭あたり最大2万円まで補助が出るなど、自己負担がほぼかからない仕組みを用意している自治体も珍しくありません。活動を始める前に、自分の住む市区町村のホームページで「地域猫」「不妊去勢手術助成」といったキーワードで検索し、申請条件や上限額を控えておくと、団体側との連携もスムーズになります。
よくある質問
Q. 犬や猫を飼った経験がなくても参加できますか。
A. 未経験者を歓迎する団体がほとんどで、初回に基本的な接し方や捕獲器の扱い方を説明する講習を設けています。まずは見学や体験参加から始め、団体の方針や雰囲気を確かめてから継続を決める人が多いです。
Q. 交通費や活動費は自己負担ですか。
A. 団体によって異なりますが、交通費は自己負担のところが多い一方、TNR活動の手術費用や捕獲器のレンタルは団体や自治体の助成でまかなわれるケースが一般的です。参加前に負担範囲を確認しておくと安心です。
Q. 家族にペットアレルギーがいても関われますか。
A. 自宅に動物を持ち帰らない活動であれば問題になりにくいですが、施設内での作業は毛やほこりに触れる機会が多いため、事前に軽い体験参加をして体調への影響を確かめておくと安心です。
Q. 夫婦で一緒に参加することはできますか。
A. 多くの団体で夫婦や友人同士での参加を受け入れています。譲渡会の運営は受付と説明係で役割を分担しやすく、TNR活動も見回りと記録係に分かれて動けるため、二人で続けやすい活動の一つです。
保護犬猫のボランティアは、動物との関わりを保ちながら、生活の中心を自分のペースに保てる活動です。まずは近くの動物愛護センターや保護団体の見学会に足を運び、活動の実際を自分の目で確かめてみましょう。
実際に保護犬猫ボランティアに携わっている人の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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