週末に公園や商店街で開かれるマルシェやフリーマーケットに、小さなブースを出してみる。定年退職後、家庭菜園で採れすぎた野菜や、若い頃から続けてきた手芸の作品を並べる場として、こうしたイベントに出店する人が増えています。大きな利益を狙う商売というより、人と直接話しながら物を手渡す時間そのものを楽しむ活動で、退職後の週末に新しい張り合いを持たせてくれます。
マルシェ・フリーマーケットとはどんな場か
マルシェはフランス語で「市場」を意味し、地元の農産物や手作り品を扱う出店者が集まる青空市を指すのが一般的です。一方のフリーマーケットは不用品や個人が作った雑貨を持ち寄って売買する催しで、開催頻度は自治体や商店街、ショッピングモールが主催するものから民間団体が運営するものまで幅広くあります。共通するのは、法人でなくても、個人として1区画から申し込める点です。
出店できるイベントの探し方
まず確認したいのは、自治体の広報誌や公式サイトに掲載される「産業まつり」「軽トラ市」「収穫祭」といった地域イベントの出店者募集です。多くは市の産業振興課や商工観光課が窓口になっており、募集時期は開催の1〜2か月前が目安です。商店街が主催するフリーマーケットは、商店街振興組合のホームページやSNSで告知されることが多く、地元密着型のイベントほど新規出店者を歓迎する傾向があります。出店料は1区画あたり1,000円〜3,000円程度が相場で、テントや机が貸し出される会場もあれば、持参が条件の会場もあるため、募集要項を事前に読み込んでおく必要があります。元中学校教員の66歳、Dさんは、市の広報誌で見つけた「手作り市」に自作の木工品を出したのが最初の出店で、「思ったより出店料が安く、失敗しても数千円で済むと分かってから気軽に申し込めるようになった」と話しています。今では季節ごとに違う会場を回り、常連客から作品を予約されることもあるそうです。
退職者から出品されやすいもの
家庭菜園の余剰野菜
採れすぎたナスやキュウリ、里芋などを袋詰めにして並べる出店は定番です。無農薬や少量多品種であることを手書きのポップで伝えると、スーパーにはない魅力として受け止められやすくなります。
手芸品・編み物
コースターやポーチ、季節の小物など、実用性のある手芸品は価格を抑えれば手に取ってもらいやすい商品です。原価計算をきちんと行い、材料費と作業時間を踏まえた値付けをしておくと、続けるうちに赤字になる事態を避けられます。
日曜大工の作品
木工で作ったスツールや棚、プランターカバーなど、現役時代に培った技術を活かした作品は男性の出店者に人気があります。サイズが大きい商品は搬入・搬出の負担も考慮し、車で運べる範囲の大きさにとどめるのが無難です。
手に取ってもらうための見せ方
同じ商品でも、並べ方一つで売れ行きが変わります。野菜であれば重さと価格をひと目でわかるようにし、手芸品であれば実際に使っている写真をカードにして添えると、初めて見る人にも用途が伝わりやすくなります。布や木箱で高さに変化をつけて陳列すると、通りすがりの人の目に留まりやすくなるという工夫も、何度か出店しているうちに自然と覚えていくものです。値札には作った背景や産地を一言添えると、価格の妥当性が伝わり値引き交渉も減ります。
準備しておきたいもの
テント、折りたたみ机、椅子、日よけ、釣り銭用の小銭は基本の装備です。屋外開催の場合は天候による中止の可能性も事前に確認し、雨天時の返金規定や振替日の有無を主催者に聞いておくと当日の混乱を防げます。会計の記録用にノートやスマホの家計簿アプリを使い、売上と経費を分けて記録しておくと、活動を続けるかどうかの判断材料にもなります。
1回の出店でどのくらいの売上になるか
規模の小さいマルシェでは、1回の出店で売上5,000円〜1万5,000円程度になるケースが多く、出店料や交通費、材料費を差し引くと手元に残るのは数千円というのが実感に近い数字です。大きく稼ぐというより、材料費や趣味の道具代を出店の売上でまかなえれば十分という考え方で臨んでいる人がほとんどです。人気の高い会場では朝一番で品切れになることもあれば、天候や客層によって全く売れない日もあり、この振れ幅を前提に在庫量を調整する感覚は数回出店するうちに身についてきます。
収入よりも大きい、人とのつながり
マルシェやフリマ出店の魅力は、売上そのものより、隣のブースの出店者や訪れたお客との会話にあると話す人が多くいます。定年後は職場でのやり取りがなくなり、初対面の人と話す機会が急に減りがちですが、出店は自然な形で会話が生まれる場です。同じ会場に定期的に出ているうちに顔なじみができ、地域の別のイベント情報を教えてもらえるようになったという声もよく聞きます。地域とのつながりを作る取り組み全般については地域とのつながりを作る:自治会・町内会に馴染むコツ、活動を通じた交流の広げ方は定年後に始めやすい趣味・サークルの探し方も参考になります。野菜作りそのものを本格的に始めたい人は農業・家庭菜園を始める、畑を借りたい場合は家庭菜園から一歩進んだ「市民農園」を借りるもあわせてご覧ください。
小さく始めて続けるコツ
最初から毎週出店しようとせず、月1回のペースで試し、体力面や作業量への負担を確かめてから頻度を上げるのが長続きのコツです。立ちっぱなしの時間が数時間に及ぶため、折りたたみ椅子を用意し、こまめに座って休むことも忘れずにいたいところです。売れ残った商品は近所や親戚に配ることも見込んで数量を控えめに用意すると、廃棄の悩みも減らせます。副業として本格的に取り組みたくなった場合は起業ではなく小さく副業から始めるで扱う古物商許可や税務上の注意点も参考にしておくと安心です。
よくある質問
Q. 出店するのに許可や資格は必要ですか。
A. 手作り雑貨や中古の個人所有物を単発で売る分には特別な許可は不要です。ただし食品を調理して販売する場合は保健所の営業許可や食品衛生責任者の資格が必要になるため、飲食物を扱う出店は事前に管轄の保健所へ確認してください。
Q. 一人で出店するのが不安です。
A. 初回は友人や配偶者と一緒に出店し、接客と会計を分担する人が多いです。会場によっては複数の出店者が1区画を共同で借りられる「シェア出店」を認めている場合もあるので、主催者に相談してみるとよいでしょう。
Q. 天候不良で中止になったらどうなりますか。
A. 屋外イベントは雨天中止や小雨決行など会場ごとに規定が異なります。出店料の返金の有無、振替日の設定については申し込み前に募集要項の該当箇所を必ず確認しておきましょう。
Q. 車がなくても出店できますか。
A. 会場によっては駅前や商店街の近くで開催され、台車やキャリーカートで荷物を運べば十分な規模のところもあります。荷物量の多い日曜大工の作品などは車での搬入が前提になりやすいため、自分の商品量に合った会場を選ぶことが大切です。
マルシェやフリーマーケットへの出店は、大きな元手をかけずに始められ、うまくいかなくても失うものが少ない活動です。まずは近所で開かれる小規模なイベントに足を運び、出店者の様子を見学することから始めてみましょう。
実際にマルシェ・フリーマーケット出店を経験した人の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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