定年退職者の再就職先として警備員はハローワークの求人票に常に一定数並ぶ職種です。未経験でも応募でき、採用後に会社負担で研修や検定資格の取得を進められる仕組みが整っているため、年齢を理由に敬遠されにくい仕事のひとつになっています。一方で夜勤や長時間の立ち仕事が伴う現場もあり、体力面での見極めが欠かせません。仕事の種類から資格制度、給与・シフトの実例まで、応募前に知っておきたい実態をまとめます。
警備員の仕事の種類
警備業務は警備業法上、1号から4号までの区分に分かれています。定年退職者の応募が多いのは、オフィスビルや商業施設の出入口・巡回を担当する「施設警備(1号業務)」と、道路工事現場や駐車場で車両や歩行者を誘導する「交通誘導警備(2号業務)」の2つです。施設警備は屋内での座り仕事や立哨が中心で、天候の影響を受けにくく、防犯カメラのモニター監視を任される現場もあります。交通誘導警備は屋外での立ち仕事が主体となり、夏の炎天下や冬の路上での勤務があるため、施設警備に比べると体力的な負荷は大きくなります。このほか、現金輸送を担当する「輸送警備(3号業務)」や要人・イベントの警護を担当する「身辺警備(4号業務)」もありますが、未経験のシニア層が最初に就くケースは少なく、施設警備・交通誘導警備からの応募が実質的な入り口になっています。
必要な資格
検定制度と配置基準
警備員として働くために法律上必須の資格はありませんが、採用後に「新任教育」と呼ばれる法定研修(座学と実技あわせて合計30時間前後)を受けることが警備業法で義務付けられています。この研修は勤務初日から数日間かけて実施され、給与が発生する形で受講できる警備会社がほとんどです。交通誘導警備の現場では、都道府県公安委員会が実施する「交通誘導警備業務検定」の合格者を一定の割合で配置することが法律で定められているため、検定資格を持つ警備員は現場責任者やリーダー的な立場での採用につながりやすく、時給も上乗せされる傾向があります。検定は2級から始めて実務経験を積んだ後に1級を目指す仕組みで、定年後に役立つ資格の取り方で紹介しているように、警備会社が受検費用を負担する制度を設けているところも少なくありません。
シニアの採用が多い理由
警備業界がシニア層の採用に積極的な背景には、慢性的な人手不足に加えて、長年の社会人経験を持つ人材への評価があります。交通誘導や施設の受付対応では、丁寧な言葉遣いや冷静な状況判断が求められる場面が多く、会社員時代の対人経験がそのまま生きるためです。また警備業法では18歳未満の就労が禁止されている一方、上限年齢の法的な定めはなく、健康状態に問題がなければ70代でも現役で勤務している警備員は珍しくありません。シニア向け人材派遣サービスで働くという選択で扱っているように、警備会社の多くは登録制の勤務形態を用意しており、週2〜3日から働き始められる柔軟さも採用のハードルを下げています。
体力面での注意点
施設警備は夜勤を含む交代制のシフトが組まれることが多く、24時間勤務(仮眠時間を含む)の翌日を休日とする「隔日勤務」を採用している現場もあります。夜勤に慣れるまでは生活リズムの乱れを感じる人が少なくなく、初めて警備の仕事に就く場合は、まず日勤のみのシフトで働ける現場を希望条件として伝えておくと負担を抑えられます。交通誘導警備は立ちっぱなしの時間が長く、真夏の炎天下や真冬の路上勤務では熱中症・低体温症のリスクへの備えが欠かせません。多くの警備会社は水分補給用の休憩時間を法定より多めに設定し、冷却ベストや防寒着を貸与するなどの対策を取っていますが、膝や腰に持病がある人は、現場の作業内容(長時間の立哨か、座って行う監視業務か)を面接時に確認しておくと安心です。
ある元製造業の管理職だった65歳男性は、再雇用の期限を迎えたタイミングで警備会社に登録し、最初の半年は日勤の施設警備で勤務しました。「最初の1週間は立ちっぱなしがこたえたが、休憩の取り方や靴を変えることで慣れた」と振り返っており、その後は交通誘導警備業務検定2級を取得し、リーダー手当がついた現場に配置されるようになったといいます。
求人の探し方と面接での確認ポイント
警備員の求人は、ハローワークの窓口に加え、警備会社が独自に運営する採用サイトや、シニア向け求人に特化した転職エージェントでも多数扱われています。ハローワークの窓口を使いこなすコツで触れているとおり、求人票には「未経験歓迎」「研修制度あり」「制服・装備品貸与」といった記載があるかを確認すると、初めての応募でも安心材料になります。面接では、勤務地までの通勤時間、夜勤の有無、屋内勤務と屋外勤務の割合、冬季・夏季の防寒着や冷却グッズの貸与状況を具体的に質問しておくと、入社後のミスマッチを減らせます。転職エージェントの選び方で扱っているように、シニア層の実績が豊富なエージェントを経由すると、体力面の希望を踏まえた配置先を紹介してもらいやすくなります。
実際の給与・勤務シフトの例
施設警備の日勤(8時間勤務)は日給9000〜1万2000円程度、交通誘導警備は日給1万〜1万3000円程度が目安です。夜勤を含む隔日勤務では、1回の勤務(仮眠時間を含む16時間前後の拘束)で日給1万5000〜2万円程度になることもあり、月に10回程度勤務すると月収15万〜20万円程度になる計算です。高年齢雇用継続給付の仕組みで解説しているとおり、60〜64歳で以前の賃金より収入が下がった場合に受け取れる給付金の対象になることもあるため、勤務条件が固まったらハローワークで自分の給与水準が該当するか確認しておくと、家計の見通しが立てやすくなります。
制服・装備品と交通費の扱い
警備員の制服、警笛、誘導灯といった装備品は多くの警備会社が無償で貸与しており、退職時に返却すれば自己負担は発生しません。勤務先までの交通費は実費支給が一般的ですが、現場が日ごとに変わる交通誘導警備では、当日の集合場所が自宅から遠い現場に割り当てられることもあるため、応募時に通勤可能な範囲(例えば自宅から1時間圏内)を明確に伝えておくと、無理のある配置を避けやすくなります。
よくある質問
Q. 体力に自信がなくても応募できますか。
A. 施設警備の中でも受付や監視モニター業務が中心の現場であれば、立ち仕事の時間が短く、体力的な負担を抑えて働くことができます。面接時に希望する業務内容を具体的に伝え、交通誘導のような屋外の立ち仕事を避けたい場合はその旨をはっきり申し出ておくと、配置先を調整してもらいやすくなります。
Q. 警備の仕事は何歳まで続けられますか。
A. 法律上の上限年齢はなく、健康診断の結果に大きな問題がなければ70代でも勤務を続けている警備員が多くいます。ただし夜勤を含む隔日勤務は体力の消耗が大きいため、年齢が上がるにつれて日勤中心のシフトに切り替える警備員も少なくありません。
Q. 検定資格は取得しておいたほうがよいですか。
A. 交通誘導警備業務検定を持っていると現場でのリーダー的な立場を任されやすく、日給や時給が上乗せされる傾向があります。多くの警備会社は入社後に受検費用を負担する制度を用意しているため、未経験の段階で無理に資格を取ってから応募する必要はなく、勤務しながら取得を目指す進め方が一般的です。
実際に警備員として再就職した方の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


コメント