定年退職後、「本が好きだったから、図書館で何かできないか」と考える人は少なくありません。実際、多くの公共図書館では地域住民によるボランティア活動が日常業務の一部を支えており、時間に余裕のできた退職者の受け皿になっています。書架整理から読み聞かせ会の運営まで、活動の幅は意外と広く、体力や得意分野に合わせて関わり方を選べるのも特徴です。本記事では、図書館ボランティアの具体的な活動内容と始め方、必要な研修について整理します。
図書館ボランティアの主な活動内容
図書館ボランティアと一口に言っても、実際の業務は多岐にわたります。代表的なものを見ていきましょう。
書架整理・本の修理
返却された本を正しい分類記号の棚に戻す配架作業や、破れたページの補修、カバーフィルムの貼り直しなどを担当します。日本十進分類法に沿った棚の並びを覚える必要はありますが、決められた手順に従う作業のため、図書館業務が未経験でも数回で慣れる人がほとんどです。横浜市立図書館や世田谷区立図書館のように、専用の「本の修理ボランティア」枠を別途設けている自治体もあります。
読み聞かせ会の運営
乳幼児から小学生を対象にした「おはなし会」で、絵本の読み聞かせや紙芝居、手遊び歌の進行を担います。月1〜2回、30分程度のプログラムを組む図書館が多く、開催前には絵本選びや練習も必要になります。子育てを終えた世代が孫世代と接する機会としても人気があり、常連の親子から名前で呼ばれる関係になっていく人もいます。
リサイクル本市・除籍本の整理
蔵書更新で除籍された本を住民に無料や100円程度で譲る「リサイクル市」の会場設営や受付を手伝います。年に数回のイベント型の活動なので、定期的な拘束を避けたい人にも向いています。
対面朗読・宅配サービス
視覚障害のある利用者に本を音読する対面朗読や、来館が難しい高齢者宅への配本サービスを担う図書館もあります。声の通りや読み上げの正確さが求められるぶん、事前の研修や試読審査が設けられていることが一般的です。
ブックスタート事業の補助
0歳児健診の会場で絵本を手渡す「ブックスタート」事業に、図書館ボランティアが協力するケースもあります。保健センターに出向き、赤ちゃんと保護者に絵本の開き方や声のかけ方を実演する役割で、乳幼児との接し方に慣れている世代が重宝されます。実施の有無や協力方法は自治体ごとに異なるため、図書館窓口で確認するとよいでしょう。
始め方:自治体図書館のボランティア登録窓口へ
多くの自治体では、中央図書館のカウンターや公式サイトに「ボランティア募集」のページがあり、そこから登録申込書を入手できます。申込みから活動開始までの流れは、おおむね次のとおりです。
まず図書館窓口かウェブサイトで募集要項を確認し、申込書を提出します。次に簡単な面談や説明会があり、活動の曜日・時間帯の希望をすり合わせます。その後、初回は先輩ボランティアや職員に付き添われながら業務を覚え、数回の同行を経て単独での活動に移るのが一般的な流れです。年に1〜2回しか募集を行わない図書館もあるため、興味を持った時点で問い合わせておくとタイミングを逃しにくくなります。
登録に資格は不要ですが、活動頻度は「月2回から」「週1回程度」など図書館ごとに幅があります。フルタイムで働いていた頃の生活リズムを急に空けすぎると手持ち無沙汰になりやすいため、まずは月1〜2回から始めて様子を見る人が多いようです。
本好きだった人にとっての魅力
長年、本や活字と縁のある生活を送ってきた人にとって、図書館ボランティアは単なる社会貢献にとどまらない魅力があります。新刊の入荷情報にいち早く触れられる、利用者との会話から思いがけない一冊に出会える、自分が薦めた本が読まれていく過程を見届けられる、といった経験は現場に立つ人だけのものです。定年後に読書量を増やしたいと考えている人にとっては、読書・学び直しの楽しみ方で紹介されているような読書習慣づくりとも相性がよく、インプットとアウトプットを両立できる活動と言えます。
実際に大手メーカーで経理を担当していたある男性は、退職翌月から近所の図書館で書架整理ボランティアを始め、半年後には読み聞かせ会にも加わるようになりました。「数字ばかり扱ってきたので、絵本の世界に触れるのが新鮮だった」と話しており、担当していた分野とはまったく違う関わり方が、逆に気分の切り替えになったようです。
始める前に受ける研修・オリエンテーション
読み聞かせを担当する場合は、多くの図書館で本番前に絵本の選び方や声の出し方、間の取り方を学ぶ講座が用意されています。日本図書館協会や各都道府県立図書館が主催する「読み聞かせボランティア養成講座」を受講してから配属される仕組みの自治体もあり、数回にわたって座学と実技を積んでから本番に臨む流れです。書架整理担当であっても、初回は分類ラベルの読み方や配架ルールについて30分程度のオリエンテーションを受けるのが通例です。こうした研修があるため、図書館業務の経験がなくても始めやすい仕組みが整っています。
地域とのつながりという面では、図書館ボランティアは自治会・町内会に馴染むコツで触れられているような近隣付き合いとも自然に重なります。おはなし会に来る親子の顔を覚えたり、利用者同士のちょっとした会話に加わったりする中で、顔見知りが増えていく効果も見込めます。
他の活動との組み合わせ方
図書館ボランティアは月数回の活動が中心のため、定年後に始めやすい趣味・サークルの探し方で紹介されているような趣味活動や、ボランティア・地域活動という選択肢で挙げられている他の地域活動と並行しやすいのも利点です。週のスケジュールに図書館の当番日を1〜2日組み込み、残りを自分の時間に充てるという配分をしている人も多く見られます。何から手をつければよいか迷う場合は、退職後にやりたいことリストの作り方を参考に、自分が続けやすい頻度を先に決めてから活動先を探すと選びやすくなります。
人との接点が生まれる活動でもあるため、「孤独感」との向き合い方で指摘されているような、退職後に人との会話が減っていく状況への対策としても機能します。カウンターでの受付や読み聞かせ会での親子との会話は、規則的に人と言葉を交わす機会になります。
よくある質問
Q. 読み聞かせが未経験でも参加できますか。
A. 多くの図書館で事前研修が用意されており、未経験からの参加が前提になっています。まずは先輩ボランティアの読み聞かせを見学し、絵本選びのコツをつかんでから自分の担当回を持つという段階を踏むのが一般的です。孫に絵本を読んだ経験がある程度で十分に始められます。
Q. 活動に交通費や謝礼は出ますか。
A. 自治体によって異なりますが、無償のボランティアが基本で、交通費のみ実費支給する図書館もあります。募集要項に明記されているので、申込み前に条件を確認しておくと安心です。
Q. どのくらいの頻度で活動する人が多いですか。
A. 月1〜2回から始める人が多数派です。慣れてきたら回数を増やす、逆に他の予定と重なる月は休むといった調整ができる図書館がほとんどなので、まずは少ない頻度で申し込み、活動の様子を見ながら決めていく人が目立ちます。
図書館ボランティアは、本との付き合いを続けながら地域の子どもや利用者と接点を持てる、定年後の活動として現実的な選択肢の一つです。まずは近隣の図書館に募集状況を問い合わせてみることから始めてみましょう。
実際に図書館ボランティアを経験した人の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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