長年の社会人経験の中で培った「人の話を聞く力」や「悩みに寄り添う姿勢」を、退職後に相談員やカウンセラーという形で活かす人がいます。資格を取得して本格的に活動する道もあれば、地域の相談ボランティアという形で関わる道もあります。人の相談に乗るという働き方の選択肢を紹介します。
相談員・カウンセラーという仕事の広がり
キャリアカウンセラー、心理カウンセラー、生活相談員、消費生活相談員など、「相談」を軸にした仕事や役割は多岐にわたります。長年、部下の指導や取引先との調整、家庭内での相談役を担ってきた経験は、こうした相談業務における土台になります。人生経験の豊富さそのものが強みになる分野であり、若い世代にはない説得力を持つこともあります。
資格を取得して専門性を高める
キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、社会福祉士など、相談業務に関連する資格はさまざまです。資格取得で新しい分野に挑戦するで紹介したように、資格を取得することで、専門性の裏付けを持って活動できるようになります。特にキャリアコンサルタントは、ハローワークや企業の相談窓口など、活躍の場が幅広い国家資格として知られています。
地域の相談ボランティアという関わり方
資格取得までは考えていなくても、地域包括支援センターや社会福祉協議会が募集する相談ボランティア、傾聴ボランティアといった形で、人の話を聞く役割に関わることもできます。ボランティア・地域活動という選択肢で紹介したように、無償の活動として気軽に始められる点が魅力です。高齢者施設での傾聴活動など、体力の負担が少ない活動も多くあります。
これまでの職業経験を相談業務に活かす
人事や労務の経験がある人は職場のキャリア相談、金融関係の経験がある人はお金の相談、子育てや教育に携わっていた人は子育て相談など、自分の専門分野に近い相談業務を選ぶことで、より説得力のあるアドバイスができるようになります。退職前にスキルの棚卸しをする方法で整理した経験と、相談業務のニーズを照らし合わせておくと、自分に合った分野を見つけやすくなります。
傾聴のスキルを学ぶ
相談業務では、アドバイスをすることよりも、相手の話をじっくり聞く「傾聴」の姿勢が重視されます。長年の経験から、つい自分の意見を言いたくなってしまう人もいますが、相手の気持ちに寄り添い、最後まで話を聞く姿勢を意識的に身につける必要があります。傾聴ボランティア講座や、カウンセリングの基礎講座で、こうした姿勢を学んでおくと、実際の相談業務にも活かしやすくなります。
企業のシニア相談窓口という選択肢
近年は、企業が高齢社員やOB・OGの相談に応じる窓口を設けるケースも増えています。転職と定年退職、両方を見据えた判断軸で悩んでいる後輩世代に対して、自分自身の経験を踏まえたアドバイスを行う役割を担う人もいます。企業によっては、こうした相談役を再雇用や嘱託という形で正式に採用しているケースもあります。
相談業務の難しさと心構え
人の悩みに寄り添う仕事は、やりがいがある一方、精神的な負担を感じることもあります。相談者の抱える問題をすべて自分が解決しようとせず、必要に応じて専門機関につなぐ姿勢を持つことがポイントです。自分自身の心の健康を保つためにも、月に一度は信頼できる同僚やスーパービジョン(指導者による事例の振り返り)の機会を確保しておくとよいでしょう。
実際にキャリアコンサルタントとして活動する人の例
ある元人事部長の男性は、退職後にキャリアコンサルタントの国家資格を取得し、ハローワークの高年齢者向け窓口で週3日、相談員として働いています。現役時代に何百人もの採用面接や人事評価に携わってきた経験を活かし、同年代の求職者の悩みに寄り添いながら、再就職活動のアドバイスを行っているといいます。「自分が受けた退職や転職の不安を、次に迷っている人に伝えられることが、想像以上にやりがいにつながっている」と話しており、相談を受けた人から感謝の言葉をもらうたびに、新しい役割を得られた実感があるそうです。
消費生活相談員という専門分野もある
特殊詐欺や悪質商法の被害が社会問題になる中、消費生活相談員は、自治体の消費生活センターなどで、消費者トラブルの相談に応じる専門職です。特殊詐欺・還付金詐欺から身を守る方法で紹介したような知識を、相談を受ける立場として活かすこともできます。消費生活相談員資格試験に合格することで、専門性を持って活動できるようになりますが、これまで営業や接客、法務などに携わっていた経験も、この分野で強みになります。
オンライン相談という新しい形
近年は、対面だけでなく、オンライン会議システムやチャットを通じた相談サービスも広がっています。在宅ワーク・クラウドソーシングで働くという選択肢で紹介したような働き方と組み合わせ、自宅から相談業務に携わる人も増えています。移動の負担がなく、体力面に制約がある人でも、週1〜2日のペースから相談員としての活動を続けやすい点が、オンライン相談の大きな利点です。通信環境さえ整えば、地方在住でも都市部の相談窓口の業務を請け負えるケースもあり、住む場所を問わない働き方としても注目されています。
よくある質問
Q. 資格がなくても相談業務に関われる?
A. ボランティアとしての傾聴活動や相談員であれば、資格がなくても始められるものが多くあります。より専門的な業務に携わりたい場合は、関連資格の取得を検討するとよいでしょう。
Q. どんな人が相談員に向いている?
A. 人の話をじっくり聞くことが苦にならない人、自分の意見を押し付けずに相手のペースを尊重できる人が向いています。豊富な人生経験があることも、大きな強みになり、相談者に安心感を与えます。
Q. 収入を得ることはできる?
A. 資格を活かした専門的な相談業務であれば、報酬を得られる仕事もあります。一方、地域のボランティア活動は基本的に無償であることが多いため、目的に応じて活動の形を選ぶとよいでしょう。
Q. キャリアコンサルタントの資格取得にはどれくらいかかる?
A. 養成講座の受講から国家試験合格まで、数か月から1年程度かかるのが一般的です。資格取得で新しい分野に挑戦するで紹介したように、教育訓練給付金の対象になる講座もあるため、費用面もあわせて確認しておくとよいでしょう。
Q. オンライン相談を始めるのに必要な準備は?
A. パソコンやタブレット、安定したインターネット環境があれば始められます。操作に不安がある場合は、身近な人を相手に練習してから本番に臨むと、落ち着いて対応しやすくなります。
相談員・カウンセラーという役割は、これまでの人生経験を人の役に立てる、退職後ならではの選択肢です。資格取得からボランティアまで、自分に合った関わり方を見つけていきましょう。
実際に相談員・カウンセラーとして活動している方の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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