退職後の働き方や過ごし方は、一つに絞らなければならないものではありません。シルバー人材センターでの軽作業、ボランティア活動、趣味の講師、在宅ワークなど、複数の役割を組み合わせて生活する「パラレルキャリア」という考え方が、退職後の生き方として注目されています。複数の活動を組み合わせる暮らし方を紹介します。
パラレルキャリアとはどんな考え方か
パラレルキャリアは、一つの仕事や活動に専念するのではなく、複数の仕事・活動を並行して行う生き方を指します。現役時代は一つの会社に専念することが当たり前でしたが、退職後は時間の使い方がより自由になるため、収入を得る活動、社会貢献の活動、趣味の活動を組み合わせて、バランスの取れた生活を作ることができます。退職後の生き方、主な5つの選択肢を比較するで紹介した選択肢を、一つに絞らず組み合わせるという発想です。
なぜ一つに絞らない方がいいのか
一つの活動だけに依存すると、その活動がうまくいかなくなったときに、生活全体が不安定になるリスクがあります。複数の役割を持っておくことで、一つがうまくいかない時期があっても、他の活動が心の支えになります。退職後にモチベーションを保つ工夫で紹介したように、複数の役割があることで、日々の生活に多様な刺激と張り合いが生まれる効果も期待できます。
組み合わせの具体例
例えば、週2日はシルバー人材センターで軽作業をしながら収入を得て、週1日は地域のボランティア活動で社会貢献し、残りの時間は趣味のサークル活動や家族との時間に充てる、といった組み合わせが考えられます。シルバー人材センターの登録方法と仕事の探し方やボランティア・地域活動という選択肢で紹介したような活動を、自分なりのバランスで組み合わせていくとよいでしょう。
収入面でのメリット
一つの仕事だけに頼ると、その仕事がなくなった際の収入減少リスクが大きくなりますが、複数の収入源を持つことで、リスクを分散できます。起業ではなく小さく副業から始めるや在宅ワーク・クラウドソーシングで働くという選択肢のような、小さな収入源を複数持つことで、年金や退職金だけに頼らない、より安定した家計を作ることができます。
スケジュール管理のコツ
複数の活動を組み合わせる場合、スケジュール管理が煩雑になりがちです。カレンダーアプリや手帳を活用し、各活動の予定を一元管理する習慣をつけておくと、うっかりダブルブッキングしてしまうといったトラブルを防げます。すべての活動に全力投球するのではなく、それぞれに無理のないペースで関わることが、長く続けるための鍵になります。
活動ごとに色分けをしてカレンダーに書き込むなど、一目で予定の種類が分かるように工夫しておくと、直感的にスケジュールを把握しやすくなります。予定を詰め込みすぎないよう、あえて何も予定を入れない「余白の日」を意識的に作っておくと、息切れを防ぎやすくなります。
体力に応じた組み合わせを考える
年齢を重ねるにつれて、体力に応じて活動の組み合わせを見直していく柔軟さが欠かせません。退職後の運動習慣:体力を落とさないためにできることで紹介したような体力づくりと並行しながら、体力を使う活動と、そうでない活動をバランスよく組み合わせることで、無理なく長期的にパラレルキャリアを続けられます。
「肩書きが複数ある」という新しい自己認識
一つの会社の肩書きに依存していた現役時代と違い、パラレルキャリアでは「シルバー人材センターの会員」「地域ボランティアのメンバー」「趣味サークルの世話役」など、複数の役割を同時に持つことになります。退職後に感じる「肩書きの喪失感」との向き合い方で紹介したように、一つの肩書きを失った喪失感を、複数の新しい役割で埋めていくという考え方も、パラレルキャリアの効果の一つといえます。
家族の理解を得ながら進める
複数の活動に時間を使うことについて、家族の理解を得ておくと、後々のすれ違いを防ぎやすくなります。退職を決める前に家族と話すべき5つのことで紹介したように、それぞれの活動にどれくらいの時間を使う予定か、家族との時間とのバランスをどう取るかを、事前に共有しておくとよいでしょう。
実際にパラレルキャリアを実践する人の例
ある元銀行員の男性は、退職後、週2日はシルバー人材センターを通じて地域の施設管理の仕事に携わり、月に数回は地域の子ども食堂で会計ボランティアを担当し、空いた時間には趣味のカメラで撮影を楽しむという生活を送っています。「一つの仕事にすべての時間を使っていた現役時代とは違い、いくつかの活動を行き来することで、気持ちに余裕が生まれた」と話しており、それぞれの活動で異なる人間関係が広がったことも、大きな収穫だと感じているといいます。
収入・社会貢献・楽しみのバランスを意識する
パラレルキャリアを組み立てる際は、「収入を得るための活動」「社会に貢献する活動」「自分が楽しむための活動」という3つの軸で、バランスを意識してみるとよいでしょう。すべてを収入に結びつけようとすると疲れてしまいますし、逆にすべてが無償の活動だと、家計面での安心感が薄れることもあります。退職後の収入シミュレーションの作り方で紹介したように、まずは必要な収入額を把握した上で、残りの時間を社会貢献や楽しみの活動に振り分けるという考え方が現実的です。
一つの活動から次の活動が広がることもある
最初は一つの活動から始めたつもりが、そこでの出会いや経験がきっかけで、別の活動に発展していくこともパラレルキャリアの面白さです。ボランティア活動で知り合った人から新しい仕事を紹介される、趣味のサークルでの経験が講師活動につながるといったように、複数の活動を持っていること自体が、新しい可能性を広げる土壌になります。大学の非常勤講師・地域講師という働き方のような役割も、こうした広がりの延長線上に生まれることがあります。
よくある質問
Q. いくつの活動を組み合わせるのが適切?
A. 決まった数はありませんが、まずは2〜3つ程度から始め、無理なく続けられるかを確認しながら、少しずつ調整していくのがおすすめです。多すぎると管理が煩雑になり、かえって負担に感じることもあります。
Q. すべてを収入につなげる必要はある?
A. 必ずしも必要ありません。収入を得る活動と、無償のボランティアや趣味の活動を組み合わせることで、お金だけでなく、社会とのつながりや生きがいの面でもバランスの取れた生活を作れます。
Q. 途中で組み合わせを変えてもいい?
A. もちろん問題ありません。体力や興味の変化に応じて、活動の組み合わせを柔軟に見直していくことが、パラレルキャリアを長く続けるコツです。
Q. どれから始めればいいか迷います
A. まずは自分が一番興味を持てる活動を一つ選んで始めるとよいでしょう。慣れてきたら、そこでの経験や出会いをきっかけに、自然と次の活動が加わっていくことも多くあります。
パラレルキャリアは、一つの役割に縛られず、複数の活動を通じて豊かな生活を作る、退職後ならではの生き方です。自分に合った組み合わせを見つけながら、無理のないペースで続けていきましょう。
実際にパラレルキャリアを実践している方の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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