「完全に移住するのは不安だけど、今の暮らしだけでは物足りない」。そんな人に注目されているのが、都市部と地方の両方に生活拠点を持つ「二拠点生活」です。移住ほど思い切らずに、新しい環境との関わりを持てる暮らし方として、退職後の選択肢の一つに加える人が増えています。
二拠点生活とはどんな暮らし方か
都市部の自宅を維持しながら、週末や季節ごとに地方の家や別荘で過ごす、あるいは月の半分を都市、半分を地方で過ごすなど、二拠点生活の形はさまざまです。地方移住のリアル:メリットとデメリットを知るで紹介した完全移住とは異なり、都市部での医療や利便性を残しながら、地方でのゆったりした時間も楽しめる点が最大の魅力です。
二拠点生活が向いている人の特徴
完全に生活を変えることへの不安がある人、都市部に住む家族や友人とのつながりを大切にしたい人、季節や気分によって暮らす場所を変えたい人に向いています。一方で、二つの拠点を維持する分、費用や管理の手間が単純に倍増するわけではないものの、それなりの負担がかかる点は理解しておく必要があります。自分がどれくらいの頻度で地方に滞在したいかを、まず具体的にイメージしてみましょう。
拠点をどう選ぶか
実家がある地域、以前旅行で気に入った場所、子ども世代が住んでいる地域の近くなど、拠点を選ぶきっかけは人それぞれです。実家の空き家問題、今からできる対策で紹介したように、実家が空き家になっている場合、それを二拠点生活の拠点として活用するという選択肢も現実的です。まったく縁のない土地を選ぶ場合は、お試し滞在を繰り返しながら、じっくり時間をかけて選ぶとよいでしょう。
費用面の現実的な見通し
もう一つの住まいを持つには、購入・賃貸いずれの場合も、初期費用や維持費(固定資産税、光熱費の基本料金、管理費など)がかかります。退職後の収入シミュレーションの作り方を参考に、退職金や年金の範囲でどこまで無理なく維持できるかを、事前にしっかり試算しておきましょう。最初から物件を購入するのではなく、まずは賃貸やマンスリーマンションで二拠点生活を試してみるという進め方も、リスクを抑えるやり方です。
固定費だけでなく、拠点間を行き来するための交通費も継続的にかかる支出です。年間でどれくらいの回数往復する予定かを見積もり、交通費込みでの総コストを把握しておくと、想定外の出費に慌てずに済みます。
移動の負担も考慮に入れる
二つの拠点間の移動が、想像以上に体力的・金銭的な負担になることもあります。新幹線や飛行機を使う距離であれば、交通費もかさみますし、車での長距離移動は加齢とともに負担が増していきます。運転免許返納のタイミングと移動手段の確保で紹介したように、将来的に運転が難しくなった場合の移動手段まで見据えて、拠点間の距離を考えておくと安心です。
両方の地域とのつながりを育てる
二拠点生活を充実させる鍵は、それぞれの地域で人とのつながりを持てるかどうかです。地域とのつながりを作る:自治会・町内会に馴染むコツで紹介したように、滞在頻度が少ない拠点でも、地域の行事に顔を出す、近所と挨拶を交わすといった積み重ねが、居心地の良さにつながります。「たまにしかいないから」と遠慮せず、少しずつ関係を築いていくとよいでしょう。
健康保険・住民票の扱いを確認する
二拠点生活では、住民票をどちらに置くかによって、住民税や国民健康保険の扱いが変わります。住民税の支払い方法:退職後に来る納税通知にどう備えるかもあわせて確認し、どちらの自治体に住民票を置くのが自分にとって合理的か、事前に整理しておくとよいでしょう。医療機関のかかりつけをどちらに持つかも、健康面で見落とせないポイントです。
農業や趣味と組み合わせる楽しみ方
地方の拠点で家庭菜園を楽しむ、季節の行事に参加するなど、二拠点生活ならではの過ごし方を組み合わせている人も多くいます。農業・家庭菜園を始めるで紹介したように、都市部にはない土に触れる時間を、二拠点生活の楽しみの一つとして取り入れてみると、暮らしに変化が生まれます。
サブスクリプション型の住まいサービスという選択肢
近年は、月額定額で全国各地の拠点を自由に利用できる「多拠点居住サービス」も増えてきました。自分で物件を購入・賃貸する前に、こうしたサービスを利用して複数の地域を試しに巡ってみるのも一つの方法です。地域ごとの気候や暮らしやすさ、住民の雰囲気を実際に比較してから、腰を据える拠点を決めることで、後からのミスマッチを防ぎやすくなります。契約期間の縛りが少ないサービスも多いため、まずは短期間の利用から始めてみるとよいでしょう。
季節ごとに拠点を使い分ける楽しみ方
夏は涼しい高原の拠点で過ごし、冬は温暖な地域の拠点で過ごすなど、季節に応じて拠点を使い分ける「避暑・避寒型」の二拠点生活を楽しむ人もいます。一年を通じて快適な気候の中で過ごせるだけでなく、季節ごとの旬の食材や行事を、それぞれの地域で味わえるのも魅力の一つです。ただし、季節ごとの移動が習慣化する分、移動にかかる体力や費用の負担も考慮しながら、無理のないサイクルを組み立てることが大切です。
仕事や社会とのつながりを保ちながら実践する
完全にリタイアせず、起業ではなく小さく副業から始めるで紹介したような、場所を選ばない働き方と二拠点生活を組み合わせる人もいます。オンラインでの仕事や、地方拠点での軽い就労を組み合わせることで、収入面の不安を抑えながら二拠点生活を実践できます。それぞれの拠点で、少しずつ社会との接点を持ち続けることが、孤立を防ぐ工夫にもなります。
よくある質問
Q. 二拠点生活と地方移住、どちらがおすすめ?
A. どちらが向いているかは人それぞれです。生活を大きく変える覚悟がある人は移住、都市部とのつながりも残したい人は二拠点生活が向いています。まずは短期の滞在から始めて、自分に合うペースを見極めるとよいでしょう。
Q. 二つの住まいの管理が大変そうです
A. 不在時の管理を代行してくれるサービスや、地域の管理会社に委託する方法もあります。すべて自分で管理しようとせず、外部のサービスもうまく活用することで、負担を軽減できます。
Q. 夫婦のどちらかだけが乗り気でない場合は?
A. 無理に両方の拠点に付き合う必要はなく、それぞれが自分のペースで関わる形でも構いません。まずは短期間、一緒に体験してみてから、今後の関わり方を話し合ってみましょう。
Q. 多拠点居住サービスはどんな人に向いている?
A. 特定の拠点にこだわらず、いろいろな地域を試してみたい人に向いています。まだ移住先や二拠点の相手先を決めきれていない段階での「お試し」として活用する人が多いようです。
二拠点生活は、移住ほど思い切らずに、新しい環境との関わりを持てる柔軟な暮らし方です。無理のない範囲から始めて、自分に合ったペースを見つけていきましょう。
実際に二拠点生活を実践している方の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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