親が施設に入る、あるいは亡くなった後、実家が空き家になってしまうケースは少なくありません。「そのうち考えよう」と先延ばしにしていると、老朽化や税負担が想像以上に重くのしかかることがあります。空き家問題への向き合い方を、早いうちから整理しておきましょう。
空き家を放置するとどうなるか
空き家は人が住まなくなると、換気や通水がされないことで急速に傷みが進みます。庭の草木が伸び放題になる、屋根や外壁が劣化するといった問題は、近隣トラブルの原因にもなります。さらに、自治体から「特定空家等」に指定されると、固定資産税の軽減措置がなくなり、税負担が大幅に増えることもあります。「実家だから」と後回しにせず、早めに方向性を考えておくことが大切です。
選択肢①:売却する
誰も住む予定がない場合、売却は有力な選択肢です。空き家を相続してから一定期間内に売却すると、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例制度もあります(適用には条件があるため、税理士や不動産会社に確認が必要です)。売却を決める前に、複数の不動産会社に査定を依頼し、相場感をつかんでおくとよいでしょう。
選択肢②:賃貸に出す
立地条件によっては、賃貸物件として活用する道もあります。リフォーム費用はかかりますが、収益を得ながら空き家状態を回避できるメリットがあります。ただし、入居者が見つからないリスクや、管理の手間も考慮する必要があります。地元の不動産会社に、賃貸需要があるかどうかを相談してみましょう。
選択肢③:自分たちで活用する
セカンドハウスとして時々利用する、地方移住の拠点にするといった活用方法もあります。地方移住のリアル:メリットとデメリットを知るで紹介したように、実家のある地域への移住を検討している場合は、空き家を活かす選択肢として現実的です。ただし、定期的なメンテナンスの手間は避けられません。
選択肢④:解体して土地として活用する
建物の老朽化が進みすぎている場合は、解体して更地にし、売却や駐車場としての活用を検討する方法もあります。解体には数十万円〜数百万円の費用がかかりますが、老朽化した建物を放置するリスクを避けられるメリットがあります。解体費用の一部を補助する制度を設けている自治体もあるため、事前に確認してみましょう。
親が元気なうちに話し合っておく
実家の今後について、親が元気なうちに話し合っておくことが何より大切です。「縁起でもない」と避けがちな話題ですが、親自身の意向(売ってほしいのか、残してほしいのか)を確認しておくことで、後々の判断がスムーズになります。親の介護が始まったら最初にすることとあわせて、早い段階から少しずつ話を始めてみましょう。
兄弟姉妹との合意形成も欠かせない
実家が共有名義で相続される場合、兄弟姉妹の意見が分かれると、売却や活用の判断が進まなくなることがあります。相続・生前贈与について今から考えることで紹介したように、早い段階で家族全員の意向をすり合わせておくことが、円滑な対応につながります。
相談窓口を活用する
空き家対策について、多くの自治体が相談窓口や「空き家バンク」といった制度を設けています。空き家の活用方法や、解体・売却の補助制度について、まずは実家のある自治体の窓口に問い合わせてみましょう。民間の空き家活用専門の業者に相談する方法もあります。
生前整理とあわせて進める
実家の片付けや荷物の整理は、空き家問題への対応と切り離せないテーマです。断捨離・生前整理の始め方で紹介したように、親が元気なうちから少しずつ荷物を整理しておくことで、いざ空き家の活用方法を決める際の準備もスムーズになります。
資産全体の中で空き家を位置づける
実家という不動産も、家族全体の資産の一部です。退職を決める前にやっておきたいお金の棚卸しで紹介した手順とあわせて、実家の資産価値や維持コストも含めて、家族の資産全体を把握しておくと安心です。
空き家バンクという選択肢を知っておく
「空き家バンク」は、売却・賃貸を希望する空き家所有者と、移住希望者などの利用希望者を自治体がマッチングする仕組みです。特に地方の自治体で導入が進んでおり、通常の不動産市場では買い手が見つかりにくい物件でも、地方移住を検討している人とのマッチングによって活用先が見つかることがあります。登録は無料で行える自治体が多いため、売却や賃貸を検討する際は、地元の不動産会社への相談とあわせて、実家のある自治体に空き家バンク制度があるかも確認してみましょう。
火災保険・地震保険の見直しも忘れずに
空き家になった後も、火災保険や地震保険をそのまま継続しているケースは多くありますが、人が住んでいない期間が長引くと、補償内容や保険料の条件が変わることがあります。放置期間が長くなるほど、火災や水漏れなどのトラブルに気づくのが遅れるリスクも高まるため、空き家用の保険プランへの切り替えを検討しつつ、定期的な見回りの体制を整えておくことが大切です。生命保険・医療保険の見直しタイミングで紹介した保険の見直しの考え方は、火災保険にも応用できます。
老朽化が進む前に動き出す重要性
空き家問題は、時間が経つほど選択肢が狭まっていく性質があります。建物の老朽化が進むと、売却できる価格が下がるだけでなく、賃貸としての需要も見込みにくくなり、最終的には解体一択という状況に追い込まれることもあります。親が入院・入所したタイミングや、実家が空き家になった直後など、状況が動いたそのタイミングで、早めに今後の方針を検討し始めることが、選択肢を広く保つための鍵になります。
遠方に住む相続人同士の情報共有
兄弟姉妹がそれぞれ別の地域に住んでいる場合、実家の状態や必要な手続きについて、情報がうまく共有されないまま時間だけが過ぎてしまうことがあります。オンラインの通話やメッセージアプリを活用し、写真や書類を共有しながら定期的に状況を報告し合う仕組みを作っておくと、離れていても足並みをそろえて対応を進めやすくなります。誰か一人に負担が集中しないよう、役割分担を明確にしておくことも大切です。
よくある質問
Q. 空き家のままにしておくと税金はどう変わる?
A. 住宅が建っている土地は固定資産税が軽減される特例がありますが、「特定空家等」に指定されるとこの軽減が受けられなくなり、税負担が数倍になることもあります。放置は税金面でも不利になる点を理解しておきましょう。
Q. 遠方に住んでいて実家の管理ができません
A. 空き家管理を代行してくれる民間サービスもあります。定期的な見回りや通気・通水を代行してもらうことで、劣化を防ぎながら、今後の方針をじっくり検討する時間を確保できます。
Q. 相続放棄すれば空き家の管理義務もなくなる?
A. 相続放棄をしても、他に管理する相続人がいない場合は、一定の管理義務が残ることがあります。安易に「放棄すれば関係なくなる」と考えず、専門家に相談しましょう。
Q. 空き家バンクに登録すればすぐに売れる?
A. 登録したからといって必ず買い手が見つかるとは限りません。立地や建物の状態によって需要は異なるため、空き家バンクと並行して、通常の不動産会社にも相談しておくと、選択肢を広げられます。
実家の空き家問題は、先延ばしにするほど選択肢が狭まりやすいテーマです。親が元気なうちから、家族で少しずつ話し合いを始めておきましょう。
実際に実家の空き家問題に向き合った方の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


コメント