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退職金は債券投資で守りながら増やす、六十代向けの具体的な選び方

2026 10/20
お金
2026年10月23日

退職金の運用というと株式投資信託がまず思い浮かびますが、六十代からの資産運用では値動きの緩やかな債券投資も選択肢の中心に据える価値があります。債券は株式に比べて価格変動が小さく、満期まで保有すれば額面金額が戻ってくる仕組みのため、退職後の生活資金の一部を「守りながら増やす」手段として位置づけられます。ここでは個人向け国債から社債、外国債券まで、六十代が検討しやすい債券投資の具体的な選び方を説明します。

目次

債券投資の基本的な仕組み

債券は国や企業がお金を借りる際に発行する証書で、購入した人は発行体に資金を貸し付け、利子(クーポン)を定期的に受け取り、満期日には額面金額が返還されます。株式のように企業の業績次第で価値が大きく変動するのではなく、発行体が破綻しない限り、あらかじめ決まった利率と償還額が保証されている点が特徴です。財務省が発行する個人向け国債は、最低〇・〇五パーセントの金利が保証されており、発行から一年経過すれば中途換金も可能です。二〇二六年時点の変動十年型の個人向け国債の金利は市場金利の動向により変動しますが、大手銀行の普通預金金利と比べると相対的に高い水準で推移しています。

個人向け国債の三つのタイプ

個人向け国債には、変動十年、固定五年、固定三年の三種類があります。変動十年は半年ごとに適用金利が見直されるため、将来金利が上昇した場合に恩恵を受けやすい一方、固定五年・固定三年は発行時点の金利が満期まで固定されるため、金利が下がる局面でも当初の利率を確保できます。証券会社や銀行の窓口、またはゆうちょ銀行でも購入でき、最低一万円から一万円単位で購入できるため、退職金の一部を試験的に振り分けやすい商品です。

社債と外国債券のリスクと利回り

国債より高い利回りを求める場合、企業が発行する社債も選択肢になります。信用格付けの高い大手企業の社債(例えば大手商社や通信会社)であれば、国債より一パーセント前後高い利回りが設定されることが多く、証券会社の窓口で個人向けに販売される案件もあります。ただし、格付けの低い企業の社債は利回りが高い分、発行体の経営が悪化した場合に元本が戻ってこないリスク(信用リスク)が高まります。格付投資情報センター(R&I)や日本格付研究所(JCR)が公表する格付けを確認し、A格以上を目安にするなど、自分なりの基準を持って選ぶことが重要です。

外国債券は為替変動という別のリスクを伴う

米国債や豪州国債など外貨建ての債券は、国内債券より高い利回りが設定されていることが多く、二〇二六年時点でも米国十年国債の利回りは日本国債を大きく上回る水準にあります。ただし、購入時と償還時の為替レートの差によって、円換算した実際のリターンが利回り通りにならないことがあります。例えば一ドル百五十円で購入した米国債が償還時に一ドル百三十円まで円高が進んでいた場合、利子収入があっても為替差損で元本割れとなる可能性があります。外貨建て商品全般のリスクについては外貨建て保険商品のリスク解説でも取り上げていますので、あわせて確認してください。

投資信託(債券型)を使う方法

個別の債券を選ぶ手間をかけずに債券投資を行いたい場合は、国内債券や先進国債券に投資する投資信託(債券型ファンド)を利用する方法もあります。複数の債券に分散して投資するため、一つの発行体が破綻した場合の影響を抑えられる利点がありますが、個別債券のように満期まで保有すれば元本が戻る仕組みではなく、基準価額は市場金利の変動により日々上下します。信託報酬は年率〇・二パーセントから〇・五パーセント程度のインデックス型債券ファンドを選ぶと、コストを抑えながら分散効果を得られます。投資信託の商品選びについては積立投資商品の選び方も参考になります。

ある元銀行員の六十四歳男性が組んだ債券中心のポートフォリオ

ある地方銀行で融資担当として長年勤務し六十歳で定年退職した男性は、退職金の中から一千万円を債券中心の運用に振り分けました。内訳は、個人向け国債変動十年に三百万円、大手企業の社債に三百万円、国内債券型の投資信託に二百万円、残り二百万円は満期の異なる複数の定期預金に分散する形です。株式投資信託も別途保有していますが、「株式で値下がりした年でも、債券部分の利子収入があることで、家計全体の心理的な安定感が違う」と話しています。この男性は、満期が来るたびに次の債券に乗り換えるのではなく、償還金の一部を生活費に充てることで、取り崩しと運用を両立させています。退職から四年が経過した現在、当初の元本一千万円に対して利子収入だけで累計約三十五万円を受け取っており、大きな値下がりを経験せずに資産を維持できている点に満足しているといいます。

金利上昇局面で気をつけたいこと

日本銀行の金融政策により市場金利が上昇する局面では、既発の固定利付債券の市場価格は下落します。満期まで保有すれば額面通りに償還されるため直接の損失にはなりませんが、途中で換金する必要が生じた場合は、購入時より低い価格でしか売却できない可能性があります。退職金の運用で債券を組み入れる際は、当面使う予定のない資金を充てることが前提になります。生活費として近い将来必要になる資金は、満期の短い債券や預金に置き、長期的に使わない資金を長めの債券に振り分けるという期間の使い分けが実務上の工夫になります。

債券のラダー運用という考え方

満期の異なる債券を段階的に組み合わせて保有する「ラダー運用」も、六十代からの取り崩しと相性のよい手法です。例えば三年、五年、七年、十年満期の債券を同時に保有しておけば、数年おきに償還金が発生するため、金利水準の変化に応じて再投資先を選び直す機会が定期的に訪れます。一度に大きな資金を長期の債券に固定してしまうと、途中で資金が必要になった際に不利な価格で売却せざるを得ない場合がありますが、ラダー運用であれば満期が順番に到来するため、そのつど生活費に充てるか再投資するかを選べます。証券会社の窓口では、退職金の運用相談の際にこのラダー運用の設計を一緒に組んでくれる担当者もいるため、複数の満期を組み合わせたプランを具体的な金額で提示してもらう方法が実務的です。

よくある質問

Q. 個人向け国債と定期預金、どちらが六十代には向いていますか。

A. 個人向け国債は発行後一年で中途換金が可能で、金利水準も定期預金より高いことが多く、元本保証に近い安心感を求める場合の選択肢になります。ただし解約時に直近二回分の利子相当額が差し引かれる点は事前に確認しておく必要があります。

Q. 社債を買う際に確認すべき最低限のポイントは何ですか。

A. 発行体の信用格付け、利率、償還までの期間、途中換金の可否の四点です。格付けがA格を下回る場合は、利回りの高さだけで判断せず、発行体の財務状況を証券会社の窓口担当者に確認することが実務的な対応になります。

Q. 外国債券は退職金運用に組み込むべきでしょうか。

A. 高い利回りが期待できる一方、為替変動により円換算のリターンが目減りするリスクがあります。退職金全体の一部、例えば一割から二割程度にとどめ、為替ヘッジ付きの投資信託を併用することでリスクを抑える方法もあります。

債券投資で退職金を守りながら増やす場合も、他の制度や支出を知っておくと全体の計画が立てやすくなります。介護保険料の年金天引きの仕組みや60代の国民健康保険料と軽減制度、老後2000万円問題の実態と計算方法も合わせて確認しておくと安心です。離婚を経験している場合は年金分割制度の基礎知識、営業を受ける機会がある場合は銀行や証券会社の営業トークの見抜き方も参考になります。

実際に債券投資で退職金を運用した方の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。

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