デスクワーク中心だった会社員生活から離れて、体を動かしながら地域に関わりたい人に向いているのが森林ボランティア・里山保全活動だ。下草を刈り、間伐材を運び、竹林を整備する作業は屋内の社会活動とは違う種類の疲労と達成感があり、作業の後には手を入れた山の姿が目に見えて変わる。都市部の交流活動よりも体力を使う分、始める前に知っておきたい実務的な注意点も多い。
里山保全活動で実際に行う作業
里山とは、人が薪や炭、堆肥用の落ち葉などを採るために手を入れ続けてきた集落近くの山林を指す。手入れをやめると数年で下草やツル植物が茂り、竹が周囲の木を覆って荒れてしまうため、定期的な人の手が必要になる。具体的な作業内容は、伸びすぎた下草を刈払機や鎌で刈る下草刈り、密生した木を間引いて日当たりを確保する間伐、放置されて隣接林まで侵食する竹を伐採・搬出する竹林整備が中心だ。地域によっては切り出した間伐材で炭を焼く炭焼き体験や、伐採木を使った薪割り、参加者の子ども連れを対象にした植樹イベントを組み合わせている団体もある。
作業は基本的にチーム単位で行われ、経験者が初心者に道具の使い方を教えながら進める。刈払機やチェーンソーを使う工程は資格・講習を修了した人が担当し、未経験者はまず鎌や鋸を使う手作業から始めるのが一般的な流れだ。
都市部・社会活動系ボランティアとの違い
地域の見守りや子育て支援といった社会活動系のボランティアが人との対話や事務作業を中心とするのに対し、森林ボランティアは屋外での肉体労働が主体になる。天候に活動が左右されやすく、夏場は熱中症、冬場は防寒対策が欠かせない。一方で、作業後に整備された林を見渡せる達成感や、参加者同士で汗を流した後の一体感は屋内活動にはない魅力だ。同じ地域に関わる活動でも、ボランティア・地域活動という選択肢で紹介されているような対人支援系の活動とは体力面での負荷がまったく異なるため、自分の体力や好みに応じて選び分けるといい。
活動先の見つけ方
自治体の森林ボランティア講座
多くの都道府県や市町村が「森林ボランティア入門講座」「森づくりリーダー養成講座」といった名称で、全4〜6回程度の講座を無料または数千円の実費で開いている。座学で林業の基礎や安全管理を学んだ後、実際の山林で下草刈りや間伐の実技を体験する内容が一般的で、修了後にそのまま地域の森林ボランティア団体に登録できる仕組みになっていることが多い。東京都や神奈川県、埼玉県など首都圏の自治体でも継続的に開講されており、退職後に初めて森林に関わる人の入口として利用しやすい。
NPO法人・森林組合が運営する活動
NPO法人森づくりフォーラムのような全国規模の団体から、地域限定で活動する小規模なNPO、地元の森林組合が運営するボランティアグループまで幅が広い。インターネット検索で「(お住まいの都道府県名) 森林ボランティア NPO」と調べると、活動日程や見学会の情報が出てくることが多い。見学会や体験会に一度参加してから正式に登録するという流れを踏む団体がほとんどなので、いきなり年間契約のような形で縛られる心配は少ない。
体力面で押さえておきたいポイント
下草刈りや竹の搬出は、想像以上に上半身と脚に負担がかかる作業だ。急斜面での作業もあり、足腰の状態によっては参加できる作業内容が限られることもある。多くの団体では参加者の年齢層が60代から70代中心で、無理のない作業を選んで担当を割り振る配慮がされているが、事前に自分の体力レベルを団体側に伝えておくと当日の作業分担がスムーズになる。退職後の運動習慣:体力を落とさないためにできることで触れられているように、月1〜2回の活動に備えて普段からウォーキングなどで基礎体力を維持しておくと、翌日の筋肉痛も軽くなる。
参加にあたっては、長袖・長ズボン、滑りにくい靴、軍手、飲料水の持参が基本装備になる。多くの団体は活動当日にボランティア保険への加入を求めるか、団体側で一括加入する仕組みを用意しているため、ケガをした場合の補償について事前に確認しておきたい。
季節による活動内容の違い
里山保全は季節ごとに作業内容が変わる。下草刈りは夏の生育期に集中し、間伐や竹林整備は木々が休眠する冬場に行われることが多い。夏場の活動では蜂やマダニへの注意も欠かせず、長袖・長ズボンの着用が虫刺されや感染症予防の面でも重要になる。冬場は落葉した林の中で見通しが利くため作業効率が上がる一方、防寒着と手袋を厚めに用意しておく必要がある。年間を通して活動する団体では、月ごとの作業予定表を配布しているところが多いので、自分の都合に合わせて参加日を選びやすい。
似たように土や自然に触れる活動として農業・家庭菜園を始めるがあるが、こちらは自分の畑を管理する個人的な作業が中心になる。里山保全は複数人でチームを組んで山全体に手を入れる共同作業という点で、関わり方の性質が異なる。地域おこしそのものに関わりたい場合は地域おこし協力隊という選択肢のように移住を伴う活動もあるが、森林ボランティアは在住地を変えずに週末だけ関わることができる。
参加者の声
大手商社で経理職を35年務めた68歳の男性は、退職の翌年に地元自治体の森林ボランティア入門講座を受講し、以後は月2回のペースで近隣の里山整備に参加している。「オフィスの中で数字ばかり見ていた仕事から一転して、竹を切ったら実際に山が明るくなるという変化がすぐ目に見える。作業の後、参加者みんなで飲むお茶がいちばんの楽しみ」と話す。活動を通じて知り合った同世代の参加者と、活動日以外にも一緒に登山に出かける関係になったという。屋外での継続的な軽い運動はサルコペニア予防:筋力を落とさない食事と運動で紹介されている加齢による筋力低下の予防にもつながっており、この男性は「趣味と健康維持と人付き合いが一度に手に入った」と振り返る。
森林分野に限らず、地域とのつながりを広く持ちたい場合はNPO・市民活動への参加という選択肢で紹介されている他分野の市民活動と並行して関わる人もいる。里山保全での活動をきっかけに、地元の祭りの運営や環境教育イベントの手伝いに誘われて活動の幅が広がるケースも少なくない。
よくある質問
Q. 体力に自信がなくても参加できますか。
A. 作業内容は難易度別に分かれていることが多く、荷物の運搬など軽めの作業から始められる団体もある。事前見学の際に自分の体力レベルを伝え、無理のない作業から始められるか確認しておくと安心だ。
Q. チェーンソーや刈払機を使う技術は必須ですか。
A. 必須ではない。多くの団体では未経験者は鎌や鋸を使う手作業から始め、希望すれば刈払機取扱いの特別教育やチェーンソーの講習を団体経由で受けられる場合がある。まず手作業に慣れてから機械作業に進む流れが一般的だ。
Q. 道具は自分で用意する必要がありますか。
A. 鎌や鋸などの基本的な道具は団体側が貸し出してくれることが多い。長袖・長ズボン・軍手・タオル・飲料水といった服装や消耗品は各自で用意するのが基本なので、初回参加時に持ち物リストを確認しておくといい。
整備された山道を歩きながら「ここは自分が手を入れた場所だ」と実感できるのは、里山保全ならではの手応えだ。まずは自治体の講座や見学会に一度足を運ぶところから始めてみるといい。
実際に森林ボランティア・里山保全活動に参加している人の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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