「エンディングノート」という言葉を聞いたことはあっても、実際に何を書けばいいのか分からず、手を付けられていない人は多いのではないでしょうか。遺言書のような法的効力はありませんが、自分の希望や情報を家族に伝える手段として、退職を機に書き始める人が増えています。具体的な書き方を整理しておきましょう。
エンディングノートとは何か
エンディングノートは、自分の資産状況、医療や介護についての希望、葬儀の意向、家族へのメッセージなどを、自由な形式で書き記しておくノートです。遺言書と違って法的な拘束力はありませんが、「もしものとき、家族がどう動けばいいか」を具体的に示してくれる実用的な資料になります。堅苦しく考えず、まずは書けるところから少しずつ埋めていく気持ちで始めるとよいでしょう。
まず書いておきたい項目①:資産・財産の情報
預貯金口座、保険、不動産、証券口座など、資産の一覧は最も重要な項目の一つです。退職を決める前にやっておきたいお金の棚卸しで整理した内容を、そのままエンディングノートに転記する形でまとめておくと効率的です。銀行名や支店名、おおよその金額だけでも記録しておけば、いざというときに家族が資産を把握しやすくなります。
まず書いておきたい項目②:デジタル資産・ログイン情報
ネット銀行やネット証券の口座、サブスクリプションサービス、SNSアカウントなど、通帳や書類に残らない「デジタル資産」は、家族が把握しづらい代表的な項目です。すべてのパスワードを書き記す必要はありませんが、どんなサービスを利用しているか一覧にしておく、パスワード管理アプリを使っている場合はその存在だけでも伝えておくと、家族の負担を大きく減らせます。
まず書いておきたい項目③:医療・介護についての希望
延命治療を望むかどうか、介護が必要になった場合にどこで過ごしたいか(自宅か施設か)といった希望は、本人の意思が確認できなくなってから家族が判断に迷いやすい部分です。介護施設・老人ホームの選び方の基礎知識もあわせて参考に、漠然とでも「こうしたい」という方向性を書いておくことで、家族の精神的な負担を減らすことができます。
まず書いておきたい項目④:葬儀・お墓についての希望
葬儀の規模や形式(家族葬にしたい、宗教的な儀式は不要など)、お墓についての考え(既存のお墓に入りたい、樹木葬を希望するなど)も、書き残しておくと家族が判断しやすくなる項目です。生前に喪主候補となる家族と、大まかな方向性だけでも話しておくと、ノートの内容もより現実的なものになります。
まず書いておきたい項目⑤:家族へのメッセージ
実務的な情報だけでなく、家族への感謝の言葉や、伝えておきたい思いを書き残す人も多くいます。堅苦しい文章である必要はなく、普段は照れくさくて言えない気持ちを、ノートという形を借りて伝える人も少なくありません。この部分は、書いていて気持ちが整理される効果もあるといわれています。
書き方に決まったルールはない
市販のエンディングノートを使ってもよいですし、自治体が無料で配布しているものや、普通のノートに自分なりの項目を作って書いても構いません。一度にすべてを完成させようとせず、思いついたときに少しずつ書き足していく形で十分です。断捨離・生前整理の始め方で紹介した物の整理と並行して進めると、資産や思い出の品についての情報も自然とまとまりやすくなります。
書いた後の保管場所も考えておく
せっかく書いても、家族がその存在を知らなければ意味がありません。書いたことを家族に伝えておく、あるいは分かりやすい場所に保管しておくことが大切です。個人情報が多く含まれるため、誰でも見られる場所ではなく、信頼できる家族だけが分かる場所に保管し、その保管場所だけは共有しておくというバランスが現実的です。
相続や生前整理ともあわせて考える
エンディングノートは、相続・生前贈与について今から考えることで紹介した相続の準備とも密接に関わっています。法的効力のある遺言書と、日々の情報を記録するエンディングノートは役割が異なるため、両方を組み合わせて準備しておくことで、より抜け漏れのない備えになります。
ペットがいる場合は世話の希望も書いておく
ペットを飼っている場合、自分が入院や介護が必要になった際、あるいは亡くなった後に誰が世話を引き継ぐかを書いておくことも大切な項目です。ペットを迎えるという選択で触れたように、ペットの寿命は長く、飼い主の人生の後半と重なることも珍しくありません。かかりつけの動物病院や、普段与えているフード、持病の有無なども書き残しておくと、急に世話を引き継ぐことになった家族が安心して対応できます。
連絡してほしい人のリストを作っておく
訃報を伝えてほしい友人や知人、仕事関係者の連絡先を、家族がすべて把握しているとは限りません。年賀状のやり取りがある相手や、疎遠になっていても伝えておきたい相手のリストを作っておくと、家族が連絡漏れに悩まずに済みます。特に、長年連絡を取り合っていた学生時代の友人などは、家族が存在すら知らないこともあるため、名前と連絡先だけでも書き残しておく価値があります。
定期的に見直して更新する習慣をつける
一度書いたエンディングノートは、完成形ではありません。資産状況や医療・介護についての考えは、時間の経過とともに変化していくものです。退職後にモチベーションを保つ工夫でも紹介したように、誕生日や年末年始など、自分にとって区切りのよいタイミングで見直す習慣をつけておくと、常に現在の状況を反映した内容を保てます。書いた日付を記入しておくと、内容がいつ時点のものかが分かりやすくなります。
よくある質問
Q. エンディングノートは遺言書の代わりになる?
A. なりません。エンディングノートには法的な効力がないため、財産の分け方など法的な拘束力を持たせたい内容は、別途遺言書として作成する必要があります。両方を役割分担して活用しましょう。
Q. 何歳くらいから書き始めるべき?
A. 早すぎるということはありません。退職を機に書き始める人も多く、内容は状況の変化に応じて更新していけば問題ありません。まずは資産の一覧など、書きやすい項目から始めてみましょう。
Q. 家族に見せるのが恥ずかしいのですが
A. 完成した内容をすぐに見せる必要はありません。まずは自分のために書き始め、内容が固まってきた段階で、存在だけを伝えておくという進め方でも十分です。
Q. ペットの世話の項目はどこまで詳しく書けばいい?
A. かかりつけの動物病院、普段のフードの種類、持病や服薬の有無など、急に世話を引き継ぐ人が困らない程度の情報があれば十分です。難しく考えず、普段自分が意識していることを書き出すつもりで進めましょう。
エンディングノートは、家族への思いやりを形にする、負担の少ない準備の一つです。完璧を目指さず、書けるところから少しずつ始めてみましょう。
実際にエンディングノートを書き始めた方の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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