自分自身の退職後の生活を考え始めた頃、同時に直面しやすいのが親の介護です。「まだ元気だから大丈夫」と思っていても、介護は突然始まることが多く、いざというときに何をすればいいか分からず慌ててしまう人が少なくありません。介護が始まったときに最初にすべきことを整理しておきましょう。
まずは地域包括支援センターに相談する
親の様子に異変を感じたら、まず地域包括支援センターに相談することから始めましょう。介護保険サービスを利用したことがなくても、「何を相談すればいいか分からない」という段階から気軽に利用できる総合窓口です。親が住んでいる地域の地域包括支援センターがどこにあるかを、今のうちに調べておくと、いざというときに慌てずに済みます。
要介護認定の申請をする
介護保険サービスを利用するには、市区町村の窓口で「要介護認定」の申請をする必要があります。申請後、訪問調査と主治医の意見書をもとに要介護度が判定され、利用できるサービスの範囲が決まります。申請から認定まで1か月程度かかることが一般的なため、必要になりそうだと感じたら、早めに申請しておくと安心です。
親の資産状況を把握しておく
介護には、想定以上の費用がかかることがあります。親の預貯金や年金収入、加入している保険などを、できるだけ早い段階で把握しておくことが欠かせません。退職を決める前にやっておきたいお金の棚卸しで紹介した手順は、親の資産を整理する際にも応用できます。デリケートな話題ではありますが、「もしものときに困らないために」という理由を伝えれば、話しやすくなることもあります。
兄弟姉妹との役割分担を早めに話し合う
介護は一人で抱え込むと、心身ともに大きな負担になります。兄弟姉妹がいる場合は、誰が主に対応するか、費用はどう分担するかを、介護が本格化する前に話し合っておきましょう。「誰かがやってくれるだろう」という曖昧な状態のまま進めると、後々のトラブルにつながりやすいポイントです。
ケアマネジャーとの付き合い方
要介護認定を受けると、ケアマネジャー(介護支援専門員)が、本人や家族の状況に合わせた「ケアプラン」を作成してくれます。ケアマネジャーは介護の心強い相談相手になるため、遠慮せず、困っていることや不安に思っていることを率直に伝えることが大切です。相性が合わないと感じた場合は、変更を相談することもできます。
自分の生活との両立を考える
親の介護と、自分自身の退職後の生活を両立させることは、多くの人にとって大きな課題です。退職後の一人時間との付き合い方で紹介したように、自分の時間もある程度確保しながら、無理のない範囲で介護と向き合うことが、長く続けるために欠かせません。すべてを完璧にこなそうとせず、介護サービスを積極的に活用する姿勢を持ちましょう。
介護離職を避けるための情報収集
親の介護を理由に、自分の仕事を辞めてしまう「介護離職」は、後になって経済的な後悔につながりやすいことが知られています。会社によっては介護休業制度や時短勤務など、両立を支援する仕組みが用意されていることがあります。介護が始まる前に、自社の制度を確認しておくと、いざというときに慌てずに選択肢を検討できます。
実家が空き家になる可能性も視野に入れる
親が施設に入る、あるいは同居を始めるといった状況になると、実家が空き家になる可能性が出てきます。空き家は放置すると老朽化や近隣トラブルの原因になるだけでなく、固定資産税の負担も続きます。実家の空き家問題、今からできる対策もあわせて確認し、介護と並行して実家の今後についても早めに考えておくと安心です。
相続についても少しずつ話し始める
介護が始まると、いずれ訪れる相続についても意識せざるを得なくなります。相続・生前贈与について今から考えることで紹介したように、介護の話題と一緒に、財産の引き継ぎ方についても少しずつ話し合っておくと、後々の混乱を防ぎやすくなります。デリケートな話題ですが、介護が落ち着いているタイミングで、無理のない範囲から切り出してみましょう。
施設入居を検討する場合の準備
在宅介護が難しくなってきた場合は、介護施設への入居も選択肢になります。施設にはさまざまな種類があり、費用や入居条件も大きく異なります。介護施設・老人ホームの選び方の基礎知識もあわせて参考に、早めに情報収集を始めておくと、いざというときに慌てずに検討できます。医療費がかさむ場面も出てくるため、高額療養費制度の使い方も合わせて知っておくと、介護と医療の両方の費用負担を見通しやすくなります。
介護保険サービスの種類を大まかに知っておく
介護保険サービスには、自宅にヘルパーが訪問する訪問介護、日帰りで施設に通うデイサービス、短期間施設に宿泊するショートステイなど、さまざまな種類があります。要介護度に応じて利用できるサービスの範囲や上限額が決まるため、ケアマネジャーと相談しながら、本人の状態や家族の状況に合った組み合わせを選んでいくことになります。すべてを在宅で抱え込む必要はなく、複数のサービスをうまく組み合わせることで、家族の負担を大きく減らせます。
介護と仕事の両立を支える制度
介護休業制度では、対象家族1人につき通算93日まで、分割して休業を取得できます。また、介護休暇制度を使えば、年5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで、通院の付き添いなどの短時間の用事にも休みを取得できます。これらの制度は法律で定められた権利であり、会社に申し出れば利用できるものです。介護が始まってから慌てて調べるのではなく、元気なうちに一度、自社の人事担当や就業規則で制度の詳細を確認しておくと安心です。
介護の始まりは兆候として現れることが多い
介護は突然始まるように感じられることもありますが、実際には物忘れの増加、外出の減少、身なりへの無頓着さなど、小さな兆候が先に現れていることが少なくありません。帰省時や電話でのやり取りの中で、こうした変化に気づいたら、早めに地域包括支援センターに相談してみましょう。早期に相談することで、介護保険サービスだけでなく、予防的な取り組みも含めた選択肢を検討しやすくなります。
よくある質問
Q. 親が「介護なんて必要ない」と拒否します
A. 本人のプライドや不安から、支援を拒む人は少なくありません。いきなり介護保険の話をするのではなく、「体の負担を減らすための手伝いを頼めるサービスがある」といった伝え方で、少しずつ受け入れてもらう工夫が効果的なこともあります。
Q. 遠方に住む親の介護はどうすればいい?
A. 「遠距離介護」という形で、頻繁に訪問できなくても、地域の介護サービスやケアマネジャーと連携しながら対応している家庭は多くあります。地域包括支援センターに、遠方に住んでいる事情を伝えて相談してみましょう。
Q. 介護費用はどれくらいかかるもの?
A. 要介護度や利用するサービスによって大きく異なります。介護保険サービスを利用すれば自己負担は原則1〜3割で済みますが、施設入居を検討する場合はさらに費用がかさむこともあります。早めにケアマネジャーや窓口で見積もりを相談しておくと安心です。
親の介護は、いつ始まるか予測しづらいものです。今のうちに情報を集め、家族と話し合っておくことが、いざというときの安心につながります。
実際に親の介護に直面した方の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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