定年退職を迎えると、収入は現役時代よりも減る一方で、毎月出ていく固定費はそのまま残っているケースが多い。中でも通信費とサブスクリプション(定額課金サービス)は、契約したまま何年も内容を確認していない人が少なくない支出だ。会社員時代は忙しさに紛れて放置していたこれらの費用を退職を機に洗い出せば、年間で数万円から十数万円の削減につながることもある。ここでは具体的な見直し方法と、実際にどれくらい浮くのかの試算例を紹介する。
スマホプランの見直し
大手キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンク)の標準的なプランは、データ通信量が多い前提で設計されており、月々7,000円前後かかることも珍しくない。しかし退職後は通勤中の動画視聴や仕事の資料をスマホで確認する機会が減り、実際のデータ使用量は月数GB程度に落ち着く人が多い。まずは直近3ヶ月分の利用明細を確認し、実際に使っているデータ通信量を把握することから始めたい。
格安SIMへの切り替え
使用量が月3〜5GB程度であれば、格安SIM(MVNO)への切り替えで月額料金を1,000円台まで下げられることが多い。ワイモバイル、UQモバイル、楽天モバイル、mineo、IIJmioなど選択肢は多く、電話番号はそのまま引き継げるMNP(番号ポータビリティ)を利用すれば、契約変更による不便はほとんど生じない。大手キャリアの店舗で申し込む必要がある場合もあれば、オンライン専用プランなら手続きがすべてスマホやパソコン上で完結することもある。操作に不安がある場合は、家電量販店の携帯電話コーナーで店員に相談しながら手続きを進める方法もある。
たとえば月7,700円の大手キャリアプランから、月2,000円程度の格安SIMプランに切り替えれば、月々5,700円、年間で約68,000円の削減になる計算だ。
使っていないサブスクリプションの棚卸し
動画配信サービス(Netflix、Amazonプライム・ビデオ、U-NEXTなど)、音楽配信、電子書籍・雑誌読み放題、フィットネスアプリ、クラウドストレージなど、月額数百円から2,000円程度のサービスは、一つひとつは小さくても積み重なると家計への影響は大きい。まず、クレジットカードの明細やスマートフォンの「サブスクリプション管理」画面(iPhoneなら設定アプリ内の「サブスクリプション」)を開き、契約中のサービスを一覧化する。
次に、直近1〜2ヶ月で実際にそのサービスを開いたかどうかを一つずつ確認する。開いていない、あるいは開いても数分程度しか使っていないサービスは解約の候補になる。特に「無料お試し期間」から自動的に有料契約に移行し、そのまま忘れているケースは多い。ある元営業職の64歳男性は、契約しているサブスクリプションを棚卸ししたところ、動画配信サービスを3つ、音楽配信を2つ、使っていない筋トレアプリを1つ契約していたことが判明し、そのうち4つを解約して月額約5,400円、年間約65,000円の削減につながったという。「毎月引き落とされる金額の内訳を意識したことがなかった」と話している。
自宅インターネット回線の契約も確認する
光回線やケーブルテレビ経由のインターネット契約も、長期契約者向けの割引が切れて割高な料金のまま自動更新されていることがある。加入している回線会社に問い合わせ、現在の月額料金と、他社に乗り換えた場合の料金を比較してみるとよい。特にスマホと同じ会社の回線をセットで契約すると、スマホ側の月額料金が割引になるセット割が用意されていることも多く、格安SIMへの切り替えとインターネット回線の見直しを同時に行うことで、それぞれ単独で見直すよりも大きな削減効果が得られる場合がある。契約更新月を過ぎるといつでも違約金なしで解約できる回線もあれば、更新月以外の解約に費用がかかる回線もあるため、契約書やマイページで更新月を確認してから手続きを進めたい。
固定電話の必要性を見極める
固定電話は月額基本料だけで1,500円から2,000円程度かかるが、退職後は業務連絡の必要がなくなり、家族や友人との連絡もスマホで済ませる人がほとんどになる。一方で、金融機関や医療機関、行政の一部手続きで固定電話番号の登録を求められることがある点には注意が必要だ。また、高齢の親がいる場合、固定電話を防犯や見守りの連絡手段として残しているケースもある。
解約を迷う場合は、直近半年間の固定電話の着信・発信履歴を確認し、実際にどの程度使っているかを確認するとよい。ほとんど使っていなければ、NTTの休止手続き(電話番号を一定期間保持したまま利用を止める制度)を使えば、将来また必要になった際に同じ番号で再開できる選択肢も残せる。完全に解約する場合と休止する場合で費用が異なるため、NTT東日本・西日本の窓口やコールセンターに具体的な条件を確認しておきたい。
年間でどのくらい削減できるかの試算例
実際にどの程度の削減効果が見込めるか、モデルケースで試算してみる。
スマホプランの見直し(大手キャリア→格安SIM):月5,700円減、年間68,400円
使っていないサブスクリプション4件の解約:月5,400円減、年間64,800円
固定電話の休止(基本料のみ):月1,800円減、年間21,600円
これらを合わせると、月々12,900円、年間では約154,800円の削減になる計算だ。年金収入を中心とした生活では、この金額は決して小さくない。特別な我慢や生活水準の引き下げをせずに、単に「使っていないものを止める」だけでこれだけの効果が見込めるのが、通信費・サブスク見直しの特徴といえる。
見直しの際の注意点
解約や切り替えを急ぐあまり、家族が共同で使っているサービス(家族割引プランや複数人で利用しているサブスク)を誤って解約してしまうトラブルもある。配偶者や離れて暮らす子どもと契約状況を事前に共有し、誰が何を使っているかを確認したうえで手続きを進めるようにしたい。また、格安SIMへの切り替え直後は速度や通話品質が変わることもあるため、いきなり全回線を切り替えるのではなく、まず1回線で試してから判断する方法も選べる。
よくある質問
Q. 格安SIMへの切り替えで電話番号は変わりますか。
A. MNP(番号ポータビリティ)の手続きを行えば、これまで使っていた電話番号をそのまま引き継げる。手続きの際にMNP予約番号が必要になるので、現在契約している会社に発行を依頼する。
Q. サブスクリプションの解約手続きが分からないサービスがあります。
A. Apple IDやGoogleアカウント経由で契約したサービスは、スマホの設定画面からまとめて解約できることが多い。サービスの公式サイトから直接契約した場合は、そのサイトのマイページやアカウント設定から解約手続きを行う。
Q. 固定電話を解約すると、これまでの番号はどうなりますか。
A. 完全に解約すると番号は消滅する。将来的に再度固定電話を使う可能性がある場合は、休止扱いにして番号を一定期間保持できる制度をNTTに確認するとよい。
固定費全体の見直しについては家計の見えない固定費、家計簿を使った管理方法は家計簿の見直し方で詳しく解説している。保険料の見直しは保険の見直し方、退職後の資産全体の棚卸しはお金の棚卸しを参考にしてほしい。スマホとの付き合い方については退職後のスマホ・SNSとの付き合い方も合わせて確認できる。
実際に通信費・サブスクの見直しで固定費を削減した体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。


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