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年収別、退職後の生活シミュレーション:年金だけで足りるボーダーラインはどこか

2026 9/28
お金
2026年10月16日

「年金だけでやっていけるのか」という不安の中身は、実は現役時代の年収によってかなり違います。年収400万円台だった人と800万円台だった人とでは、心配すべきポイントも、使える制度も変わってきます。ここでは現役時代の年収を3つの目安に分け、退職後の生活で実際に何が変わるのかを整理します。

目次

なぜ年収によって「安心ライン」が変わるのか

厚生年金の受給額は、現役時代の標準報酬月額(おおむね給与水準)と加入期間によって決まります。年収が高いほど受給額も増えますが、それに比例して現役時代の生活水準や住居費も高くなっていることが多く、「年金額が多いから安心」とは単純に言い切れません。一方で、年収が低かった世帯ほど、公的な減免制度の対象になりやすいという側面もあります。年収帯によって「何を優先して確認すべきか」が変わってくるのが実際のところです。

以下の3つの区分は、あくまで厚生年金の平均的な計算式から逆算した目安であり、加入期間や賞与の有無によって実際の受給額は前後します。まずは自分がどの区分に近いか、ざっくりとした位置づけを掴むための参考として見てください。

年金月15万円前後の世帯(現役年収400万円前後が目安)

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」などで示される平均的な年金月額を踏まえると、厚生年金と基礎年金を合わせて夫婦で月20万円前後、単身で月15万円前後というのが、現役年収400万円台だった人のおおよその目安です。この水準では、住民税非課税世帯に該当するかどうかが生活の質を大きく左右します。非課税世帯になると、高額療養費制度の自己負担上限がぐっと下がるほか、介護保険料の段階も下がり、自治体独自の医療費助成の対象になることもあります。定年後に使える自治体の支援制度まとめで紹介しているような制度を漏れなく確認しておくと、額面以上に生活が楽になることがあります。シルバー人材センターや週数日の再雇用など、月3〜5万円程度の収入を足すだけでも、家計の余裕は大きく変わってきます。

ある製造業出身の68歳男性は、年金だけでは月2〜3万円ほど足りない状態が続いていましたが、市区町村の窓口で住民税非課税世帯向けの医療費助成の存在を知らずに、通常の自己負担のまま通院を続けていました。窓口で相談したことで、月々の医療費が半分以下に抑えられるようになり、「知っていれば数年前から助かっていた」と振り返っています。この年収帯では、収入を増やす工夫と同じくらい、使える制度を取りこぼさないことが効いてきます。

年金月20万円前後の世帯(現役年収600万円前後が目安)

この水準になると、住民税非課税の対象からは外れることが多く、国民健康保険料や介護保険料の負担も相応にかかってきます。一方で、退職金や貯蓄にもある程度の厚みがあるケースが多く、老後資金の取り崩し方やNISA口座の使い方といった、資産をどう運用・取り崩していくかという視点が本格的に必要になってきます。生活費そのものよりも、退職金をどう管理するかが安心感を左右する年収帯といえます。

この年収帯でよく見られる失敗が、退職金を受け取った直後に銀行や証券会社から勧められるまま、一つの金融商品にまとまった額を預けてしまうケースです。数年後に解約しようとして初めて手数料の高さや元本割れに気づく、という相談も少なくありません。焦って結論を出さず、複数の窓口で条件を比較してから動く人ほど、後悔が少ない傾向にあります。

年金月25万円以上の世帯(現役年収800万円以上が目安)

この水準では、生活費に困る心配よりも、資産をどう次世代に引き継ぐかという相続の視点が現実味を帯びてきます。相続時精算課税制度や小規模宅地等の特例といった、資産規模がある程度大きい世帯ならではの制度を早めに知っておくことが、家族間のトラブルを防ぐことにもつながります。また、退職金の運用先を選ぶ際も、退職金運用でやってはいけない失敗パターンにあるような、銀行の勧誘に乗って一つの商品に集中させてしまうリスクには、金額が大きい分だけ注意が必要です。

この年収帯の世帯では、資産の一部を子や孫の教育資金・住宅取得資金として早めに移転しておくかどうかも、検討の対象になりやすいポイントです。生前贈与の非課税枠を活用するタイミングは、贈与を受ける側のライフイベント(住宅購入や子の進学など)と重なるかどうかで最適な時期が変わるため、家族間で早めに情報を共有しておくと、いざというときに慌てずに済みます。

年収に関わらず確認しておきたいこと

年収帯によって優先順位は変わりますが、どの層にも共通して大切なのは、自分の年金見込み額を「ねんきん定期便」で正確に把握しておくことです。退職後の収入シミュレーションの作り方で紹介した手順に沿って、年金・退職金・その他の収入を一度書き出してみると、自分がどの目安に近いのかが具体的に見えてきます。目安はあくまで目安であり、住宅ローンの有無や家族構成によっても実際の余裕度は変わってくる点も踏まえておきましょう。

地域による生活費の違いも重ねて考える

同じ年収帯・同じ年金見込み額であっても、都市部と地方では家賃や物価の水準が異なるため、実際の余裕度には差が出ます。年収帯で大まかな安心ラインを把握したら、自分が住む地域の生活費水準も重ねて確認しておくと、より現実的な見通しになります。

よくある質問

Q. 自分の年金見込み額はどこで正確に確認できる?

A. 毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」か、日本年金機構の「ねんきんネット」で確認できます。50歳以上であれば、現在の働き方を続けた場合の見込み額も表示されるため、より実態に近い数字が把握できます。

Q. 年収が低かった場合、年金だけでは足りない分をどう補えばいい?

A. シルバー人材センターや短時間の再雇用で月数万円を確保する方法のほか、自治体の医療費助成や介護保険料の減免制度を漏れなく使うことも、実質的な家計改善につながります。両方を組み合わせて考えるとよいでしょう。

Q. 年収が高かった人でも生活費の見直しは必要?

A. 必要です。現役時代の生活水準をそのまま維持しようとすると、年金だけでは賄いきれないケースも珍しくありません。退職金や資産の取り崩しペースを含めた全体設計を、早い段階で確認しておくと安心です。

Q. 夫婦で年収差が大きい場合、どちらの目安を基準にすればいい?

A. 夫婦それぞれの厚生年金見込み額を個別に確認し、世帯として合算した金額で考えるのが基本です。片方が専業主婦(主夫)期間を経ている場合は、基礎年金のみの受給になることも多いため、世帯全体の年金額を早めに把握しておくと、老後の計画が立てやすくなります。

もう一つ見落とされがちなのが、住宅ローンの有無による差です。同じ年収帯であっても、退職時に住宅ローンが残っているかどうかで、月々の余裕は大きく変わります。住宅ローンの一部繰り上げ返済 vs 全額完済で紹介したように、退職金の一部を返済に充てるかどうかの判断は、年収帯そのものより、残債の金額と金利水準によって決めるべき部分が大きいポイントです。

年収帯によって退職後に向き合う課題は変わりますが、どの層でも「自分の数字を早めに正確に知る」ことが出発点になります。

実際に自分の年収帯に応じた退職後の家計を組み立てた方の体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。

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