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退職所得控除の仕組みと計算方法をわかりやすく解説

2026 9/28
お金
2026年10月16日

定年退職を迎えると、勤務先から退職金がまとまって振り込まれる。会社員生活の締めくくりとして楽しみにしている方も多いはずだが、実はこの退職金にも税金がかかる。ただし退職所得には「退職所得控除」という大きな非課税枠が用意されており、仕組みを理解しておけば手取り額を正確に把握できるし、思わぬ源泉徴収で損をする事態も避けられる。ここでは退職所得控除の計算方法と、申告書の提出を忘れた場合の注意点を具体的な数字とともに解説する。

目次

退職所得控除とは何か

退職所得控除は、長年勤めた従業員への功労に配慮して設けられた税制上の優遇措置である。控除額は勤続年数によって次のように決まる。

勤続年数20年以下の場合

40万円×勤続年数で計算する。ただし計算結果が80万円に満たない場合は80万円が控除額となる。たとえば勤続15年であれば、40万円×15年=600万円が控除額だ。

勤続年数20年超の場合

800万円+70万円×(勤続年数-20年)で計算する。たとえば勤続35年であれば、800万円+70万円×(35年-20年)=800万円+1,050万円=1,850万円が控除額になる。長く勤めるほど控除額が加速度的に増えていく仕組みだ。

なお勤続年数に1年未満の端数がある場合は切り上げて1年として計算する。たとえば勤続38年3ヶ月であれば39年として計算する点も覚えておきたい。

退職所得の計算方法

退職金にかかる所得税は、退職金の全額に課税されるわけではない。実際に課税対象となる「退職所得」は次の式で求める。

退職所得=(退職金-退職所得控除額)×1/2

控除額を差し引いたうえでさらに2分の1を掛けるため、他の所得に比べて税負担がかなり軽くなるよう設計されている。この2分の1課税は長期勤続者への配慮であり、勤続年数が5年以下の役員等には適用されない特例もあるが、一般の定年退職者であればほぼ該当しない。

計算例で確認する

パターン1:勤続32年、退職金1,800万円の場合

退職所得控除額は800万円+70万円×(32年-20年)=800万円+840万円=1,640万円。退職所得は(1,800万円-1,640万円)×1/2=80万円となる。課税対象はわずか80万円で、所得税・住民税を合わせても数万円程度に収まる計算だ。

パターン2:勤続38年、退職金2,500万円の場合

退職所得控除額は800万円+70万円×(38年-20年)=800万円+1,260万円=2,060万円。退職所得は(2,500万円-2,060万円)×1/2=220万円となる。所得税率は課税退職所得220万円に対して10%の区分に該当し、控除額97,500円を差し引いた税額に復興特別所得税を加えた額が源泉徴収される。住民税は原則10%(市町村民税6%・道府県民税4%)が別途かかる。

「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出する

この優遇を受けるには、退職金を受け取る前に勤務先へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなければならない。提出しないまま退職金を受け取ると、退職所得控除も2分の1課税も適用されず、退職金の額面全体に対して一律20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)が源泉徴収されてしまう。

たとえば退職金1,800万円の場合、申告書を出していれば源泉徴収はごくわずかで済むところ、未提出だと1,800万円×20.42%=約367万円が天引きされる計算になる。差額は非常に大きく、確定申告をすれば還付は受けられるものの、それまで数百万円単位のお金が戻ってこない状態が続くことになる。

実際に、ある元製造業勤務の63歳男性は、退職金の書類を人事部から渡された際に他の書類に紛れて申告書を出し忘れ、口座に振り込まれた金額が想定より300万円以上少なく驚いたという。慌てて税務署に相談し、翌年の確定申告で還付を受けたが、「先に知っていれば余計な手間はなかった」と振り返っている。申告書は通常、退職金の手続き書類一式に含まれているため、人事・総務の担当者に「退職所得の受給に関する申告書は提出済みか」を退職前に必ず確認しておきたい。

iDeCoの一時金と重なるときは控除の計算が変わる

近年はiDeCo(個人型確定拠出年金)を一時金として受け取る人も増えている。会社の退職金とiDeCoの一時金を同じ年、あるいは近い年に受け取る場合、退職所得控除は両方を合算した勤続年数・加入年数のうち長い方を基準に計算し、控除額の使いまわしができない点に注意が必要だ。具体的には、会社の退職金を受け取った年の前年以前19年内にiDeCoの一時金を受け取っていた場合(またはその逆で前年以前4年内の場合)、控除額の計算方法が調整される。iDeCoを一時金で受け取る予定がある人は、会社の退職金を受け取る時期とどれくらい間隔を空けるかによって手取り額が数十万円単位で変わることもあるため、受け取り時期を決める前に一度シミュレーションしておくと安心だ。年金事務所やiDeCoの運営管理機関のコールセンターでも一般的な仕組みについては案内してもらえる。

住民税にも同じ仕組みが適用される

退職所得は所得税だけでなく住民税の計算にも同じ控除が使われる。住民税は退職金を受け取った年に、勤務先が特別徴収という形で天引きし、市区町村へ納付する仕組みになっている。申告書を提出していれば所得税と同様に軽減された税額で計算されるため、こちらも合わせて確認しておく必要がある。

障害者になったことが退職理由の場合は控除額が加算される

あまり知られていないが、障害者になったことが直接の原因で退職した場合、通常の計算式で求めた控除額に一律100万円が加算される。定年退職とは別のケースだが、在職中の病気やケガが原因で就労継続が難しくなり、定年を待たずに退職せざるを得なかった方には関係してくる規定だ。該当する可能性がある場合は、退職金を受け取る前に勤務先の人事担当者か税務署へ事情を伝え、加算の対象になるかどうかを確認しておくと安心である。

よくある質問

Q. 退職所得の受給に関する申告書を出し忘れて20.42%源泉徴収されてしまいました。取り戻せますか。

A. 翌年の確定申告で退職所得の計算をやり直すことで、払いすぎた税金の還付を受けられる。税務署の窓口や税理士に相談しながら手続きを進めるとよい。

Q. 退職金を複数回に分けて受け取る場合、控除はどうなりますか。

A. 同一年に複数の退職金を受け取る場合は合算して控除額を計算する。前の勤務先の退職金と通算されるケースもあるため、勤務先の給与担当者や税理士に確認するのが確実だ。

Q. 勤続年数はどの時点から数えますか。

A. 原則として入社日から退職日までの実際の在籍期間で計算する。休職期間の扱いなど細かな規定は勤務先の人事規程や税務署の案内で確認できる。

退職金の受け取り方や税金の計算に関しては、退職金の受け取り方や退職後の確定申告の記事でも詳しく解説している。住民税の支払い時期については退職金と住民税の関係、割増退職金がある場合は割増退職金と税金の仕組みも参考になるはずだ。退職金の運用で失敗しないためのポイントは退職金運用の失敗例に、年収別のシミュレーションは年収別の退職後シミュレーションにまとめている。

実際に退職所得控除の計算で手取り額に驚いた体験談も取材しています。ご自身の経験を話してみたいという方は取材にご協力ください。

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